■ 先進国の都市封鎖により輸出依存の東南アジアで原紙需要減退、古紙価格も軟化
2020年5月
欧米の都市封鎖により古紙不足が発生し、高騰していた古紙価格が5月に入り崩れ始めた。 3月中旬以降欧米において都市封鎖が実施され感染リスクのある古紙選別を中止、埋め立てや焼却に回したことから古紙が不足、またコンテナ不足による海上運賃の値上がりも重なり古紙価格は4月末AOCC CIF CHINA 220-230㌦、EOCCもCIF ASIAで190㌦以上の高値を付けていた。
米国内の古紙回収量は通常の30-40%程だった上、巣ごもり需要から通信販売が好調、再生段ボール原紙需要が伸びた為米国内メーカーも220㌦を超えるプレミア価格にて段古紙在庫を積み増したことも価格の上昇を後押しした。
日本の古紙は年初来の先決め出荷と発生減により在庫薄であった事、先高感や月末の輸出組合価格の決定以後価格が決定する風習から契約が決まらず、欧米の価格を追いかける形で遅れて上昇した。 その後4月中旬、CIF CHINA 140-165 CIF VIETNAM 160-165(CY14.5~15.0 /kg)程であったJOCCも5月初旬インドネシア向けに一時190㌦(CY16.0-16.5/kg)を超えるほどに上昇した。
しかし原紙を輸出に依存している東南アジアではこれ以上原紙価格を下げても販売数量は改善できる見込みが無いため減産する方向に舵を切っている。
昨年末より古紙不足が続くインドネシアでさえ中芯が270㌦付近まで下がっており、120㌦以下までOCC価格を下げなければ採算が合わない。 しかし国内古紙も発生がタイトな事から急激に古紙価格を調整することは難しく、中芯やテストライナー用にOMGを120㌦付近で購入し配合する方向に切り替えつつある。
ベトナムも70~80㌦付近で手に入るAMIXの配合を増やすメーカーも出てきた。 また、5月初旬以降欧米諸国は段階的に経済活動を再開することを発表、また海上運賃が下がった事も東南アジア向け価格を押し下げた。
タイのメーカーはEOCC170ドル以上では買わず160㌦付近まで調整すると言っている。 中国のメーカーもAOCC#12を180㌦以下まで調整する意向だ。 古紙の発生が少ない為急激な暴落とはいかなくともジリジリと価格が下がってきており、今後も下落傾向は継続するものと思われる。
現在の輸出相場はJOCC CIFベトナム155~160、CIF TAIWAN 140~150 (CY14.5~15.0/kg)程となっており、さらに価格の弱含みは続いている。 しかし発生減と高値の契約残が残っていることから国内では問屋店頭15.5円/kg付近の輸出見積も散見され、出荷価格ベースは海外相場よりやや遅れて下がっている。