■ 欧州製紙各社 ロシアとの取引停止を発表
2022年3月5日
ロシアのウクライナ侵攻を受け、欧州各製紙関連企業はロシアとの取引停止、あるいはロシア国内における紙パルプ工場の生産活動を停止する措置を相次いで発表した。
フィンランドに本社を置くストラエンソ社はロシアのウクライナ侵攻を受け、ロシア国内の同社工場の生産停止と、ロシアとの輸出入取引の全てを停止すると発表した。同社はロシアに3つの段ボール工場及び木材加工工場を2か所運営しており、約1000人を雇用している。同社のロシア関連売上は全体の3%となっており影響は軽微とみている。
Metsäグループはロシアのレニングラードにおける同社の製材所から調達している木材の輸入を停止する事を決定した。ロシア製材所の生産能力は年間28.5万㎥でフィンランド及びスウェーデンの工場へ出荷していた。 同社は年間3270万㎥の木材を輸入しており、その内2460万㎥を自社使用、残りを外販している。調達している木材のうち7%がロシアからの輸入となっている。
UPM社は3月3日、ロシア向けすべての製品出荷を停止すると発表した。同社の売り上げに於けるウクライナ及びロシアへの出荷は2%程度を占める。また同社はロシアに於いて合板事業を行っており600人を雇用しており、調達しているロシア産木材の割合は10%。 同社は取引停止の理由を経済制裁ではなく、金融システムの停止に伴うものと説明している。
フィンランドの製紙用化学品会社Kemira社はロシア及びベラルーシへの出荷を停止する事を発表した。売上に占める両国の割合は約3%を占め、同社は両国のウクライナ侵攻について避難する声明を発表している。
Mondy社はウクライナ、リヴィヴ州にある製袋工場の生産を停止した事を発表した。同工場はポーランドの国境から70kmに位置し、100人が雇用されていた。一方ロシア国内の紙パルプ工場は引き続き稼働を続ける。同社ロシア工場ではパルプ及びコート紙、上質紙、段ボール原紙を生産しており、21年は年間売り上げの12%、経常利益の20%を占めた。
ロシアは森林資源豊富な国で、木材輸出量は世界7位となっており2021年の紙パルプ及び木材の輸出額は120億ドル以上と推定されている。内訳は針葉樹製材58億ドル、紙製品20億ドル、木材パレット19億ドル、パルプ13億ドル、広葉樹丸太5億ドル、針葉樹丸太5億ドル、木質ペレット3億ドルとなっている。主な輸出向け先は欧州となっており、次いで中国向けが4割を占める。 欧州各製紙企業はロシアとの取引を停止する措置を発表しており、今後ロシア於いて計画されている木材・森林事業関連の投資も凍結されるだろう。
ロシアとの貿易停止によって、中長期的に木材資源の供給が不足する事や欧州紙パルプ産業への影響が懸念される。