■ 欧州景気鈍化 原燃料高も原紙価格軟化の兆候
2022年6月22日
欧州委員会はEU及びユーロ圏の2022年の実質GDP成長率をともに2.7%と予測し、4.0%とした前回の経済予測(中間予測)から1.3ポイント下方修正した。2023年の成長率は2.3%と予測し、当初予測から0.2ポイント下方修正された。 新型コロナから回復した直後は持続的かつ堅調な拡大が見込まれていたものの、ロシアによるウクライナ侵攻に伴い、物価上昇とサプライチェーンの混乱に拍車がかかり、経済の足かせとなっている。 それでもEUのGDPがプラス成長と予測されている背景には、経済活動の再開とコロナ禍の成長支援政策の複合効果による再作資金の市場への流入が個人消費を下支えした事が要因の様だ。
しかし、インフレ圧力は年初から勢いを増しており、2022年のユーロ圏のインフレ率〔消費者物価指数は、第2四半期に6.9%でピークを迎え、通年では6.1%と予測されている。高インフレが続く事によって消費・経済活動の鈍化傾向がみられ、包装需要にも影響が及んでいる。欧州全体の段原紙在庫量は約90万㌧と前年同期の70万㌧から27%も増加した。
欧州の中でも特にドイツはウクライナの影響を最も大きく受ける見通しとなっている。ロシア産天然ガスの輸入が先細り、エネルギーコストの高騰が経済に大きな影響を及ぼしている。ドイツの経済成長率はウクライナ侵攻前の3.5%から1.5%に大きく引き下げられ、ロシア産ガスの輸入が完全に止まった場合は景気後退(リセッション)突入は避けられない見通しだ。 ドイツではウクライナ侵攻後段原紙価格の値上げが相次いで発表され、数か月連続で値上がりした。しかし6月に入り横這いからやや軟化の兆候が見られている。物価の高騰により消費が鈍化し、包装材の消費も鈍っており、ウクライナ侵攻後初の価格軟化となった。
原紙価格の軟化は英国に於いてもその傾向がみられる。イギリスの消費者物価指数は前年度比+9%と高水準にあり、PMIは3月以降50を下回る水準を維持している。コロナ禍で一時極端な供給不足によって納期3か月ほどと混乱を極めた段ボールの供給も現在は3日程度と落ち着いている。価格上昇も今は落ち着き、各製紙企業はメンテナンス休転をアナウンスし在庫調整をする計画を発表している。