■ 中国、欧州で景気失速 中国の都市封鎖やウクライナ戦争が要因
2022年7月17日
7月15日の中国国家統計局の発表した統計によると4~6月の国内総生産(GDP)は前年同期比0.4%の増加にとどまった。今年第1四半期のGDP成長率が4.8%と政府目標の5.5%を下回った事がメディアで大きく報じられたが、第2四半期はほぼゼロ成長に近いレベルにまで失速した。中国は上海など主要都市に於いて厳しい都市封鎖を行ったことから、消費や製造が妨げられ経済活動が一気に失速している。 特に都市封鎖をした上海市の影響が大きく、上海市の実質国内総生産は▲13.7%、北京市も▲2.9%の減少となった。 小売売上高は5月は6.7%減と、3ヵ月連続で前年割れ、ゼロコロナ政策によって閉店に追い込まれた飲食店なども多く、5月の飲食店収入は21%も減ったという話もある。失業率は4月には6.1%と過去2番目の高さにまで上昇、5月は5.9%に低下したが、16歳から24歳の若年層の失業率は4月の18.2%から5月には18.4%に上昇した。 中国国内でも厳しい「ゼロコロナ」政策への反発は強いものの、秋の中国共産党大会で3期目続投を目指している習近平政権は「ゼロコロナ」を放棄する姿勢はまったく見せていない。
欧州に於いても景気は急速に減退し始めている。先日日本の総合商社、三菱商事や三井物産が出資するサハリン2がロシア大統領令によって国営化され、その権益が危ぶまれる事がニュースとなったが、欧州に於いてもノルドストリーム1の運営会社の国有化がロシア側から報道された。 その後7月11日に定期点検を理由に21日までノルドストリーム1による欧州への天然ガスの供給を停止するなど、ロシア政府は原燃料の供給停止による報復措置と取っている。 ドイツの欧州経済研究センター(ZEW)が7月12日に発表した7月の景気期待指数はマイナス53.8と前月のマイナス28、市場予想のマイナス40.5を下回った。ZEW現状指数もマイナス45.8と悪化している。この数値は、新型コロナウイルスによる混乱期(20年)、欧州債務危機(12年~13年)、世界金融危機(08年~09年)など大幅に景気が悪化した時期と同水準だ。 仮にロシア産エネルギーの完全供給停止となった場合、ドイツ経済の損失は22年と23年で2200億ユーロ程度(年間産出高の6.5%程度)GDP成長率への影響は22年が0.8%程度減少、23年については成長率が、停止がなかった場合に比べ5%程度低下するとの試算もある。 また昨今の対ドル通貨安もエネルギーコストを押し上げる要因となっている。 エネルギー海外依存度の高い欧州にとっても通貨安は深刻な問題だ。 欧州に於ける22年のインフレ率は7.6%で5月時点予測の6.1%からさらに上昇した。 23年も平均4%のインフレとなり、欧州中央銀行(ECB)の目標の2倍となる見通しだ。 高インフレは一般消費に大きな影響を及ぼしており、欧州の景気失速は予想以上に加速しつつある。