進まない港の自動化 港湾既得権と国際競争力の低下①

  ■ 進まない港の自動化 港湾既得権と国際競争力の低下①

2022年2月24日

未曽有の海上運賃の高騰によって原材料が高騰し世界規模のインフレ要因となっている。資源の殆どを輸入に依存している日本にとって、海上運賃の高騰は経済的にも大きな損失となった。昨今の海上運賃の高騰は、米中貿易戦争によって世界の貿易量が縮小し、船会社が大量の保有コンテナを破棄あるいはリース契約を解約していた所に、新型肺炎が流行し巣ごもり需要によって貿易量が急上昇した事が発端となった。 米国の感染拡大によって港湾作業が遅延した事や、トラックドライバーが休業補償をもらえる事で仕事に復帰しないなど人的要因も物流の混乱とコンテナ不足を助長した。 
 バイデン政権は港湾の24時間運営を指示するなど、物流機能を正常にもどそうと様々な対策をとっているが、目先の対応だけでなく危機管理やBCPの観点からAIやIoT技術の導入によって港湾の自動化を進めるべきではないだろうか。

 港湾の自動化の遅れと世界に追い抜かれる日本の荷扱量

日本に於いても新型肺炎の流行前から、物量の増加に港湾の作業能力が追い付かない事が要因で様々な問題が発生していた。

特に東京港大井5号のコンテナ搬出入待ちによる道路混雑は有名で、事故の懸念や作業効率の悪さが問題視されている。 道路混雑の原因は港湾エリアが狭く、空バンプールとコンテナヤードが混在し搬出入のコンテナ車両が同じゲートに向かう事や、入場の際の手続きや確認を紙や人の手によるアナログな手法に頼っている事があげられる。また本船が入港した際にそちらに人手を集中させてしまうなど作業が非効率であることや、夕方16:00~17:00にはゲートが閉まってしまう事も要因となっている。諸外国では24時間稼働している港湾も珍しくない。運送会社はコンテナの搬出入にひどいときは6時間以上拘束されることもあり、貨物を運べないばかりか、その待機料をどこにも請求できないのが現状だ。
さらに働き方改革関連法の「24年問題」が待ったなしで迫ってきている。トラックドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限され、港湾での待機に交代要員を用意しなければならず負担として重くのしかかる。

荷主にとっても、できるだけ多くの貨物を輸出、あるいは輸入したくとも作業効率の悪さや時間的制限から取り扱いできる荷量にどうしても制限がある。 また高い港湾作業費が輸入コストを押し上げ、企業活動の妨げあるいは国際競争力の低下につながっている。東南アジアでは紙の輸入に掛かる港湾作業から通関、陸送まで入れたコストは1㌧あたり平均20~30㌦程度。日本では150㌦近くかかってしまう。多くの業界関係者がこの問題の解決を望んでいるが、状況は10年以上に渡り改善していない。

 世界の港湾別貨物取扱量を見ると、2000年には千葉港(6位)名古屋港(8位)横浜港(15位)がランクインしていたが、2019年には名古屋(23位)千葉(31位)横浜(40位)と大きく順位を下げている。また釜山や上海は取扱量がほぼ2倍になっているのに対し、日本の港は殆ど取扱量が変わっていない。日本の港は自国向けの貨物が殆どなのに対し、各国の主要港はトランシップハブ港として機能しその荷扱いを飛躍的に増加させているためだ。 
 一方港湾効率が悪く運賃も安い日本の港は船会社から敬遠され、コロナ渦中に日本への寄港便数は大幅に減少する結果となった。 アジアの主要港は中国やシンガポール、韓国にとって代わられ、海洋立国であるはずの日本の存在感は薄い。日本の経済成長が止まっている事も要因にあるが、港湾の非効率性に起因する混雑を鑑みると港湾作業効率化の遅れが日本の経済成長を妨げていると言っても過言ではない。

世界の港湾別貨物取扱量ランキング TOP20
港湾別本船寄港数推移

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