■ 米中貿易戦争x新型肺炎で脱中国は加速するのか? 東南アジアで増産される原紙に需要はあるのか?④
2020年9月
古紙を主原料とする段ボール原紙産業においては古紙の輸入規制により半強制的に脱中国が進行する事となる。しかし比較的付加価値の低い包装・段原紙製紙産業はもとより地場産業、消費を海外に依存する事を前提とする事は対費用的にみて非効率で長期的に続くとは考えにくい。
確かに中国では古紙不足に対応するべく段原紙や再生パルプの輸入が増加した。一方でパルプ使用率を増やした高強度原紙の製紙ラインが増設され、段ボールのシングル化・薄物化も進んでいる。物流供給構造の変化と同時に品質需要そのものも変化しつつある様だ。
いずれ中国も古紙代替え繊維やパルプベース原紙による地産地消が増え、東南アジアで作られた古紙ベースの段原紙(B或いはCライナー)の中国向け需要は近い将来衰えるとも予測できる。さらには大手中華系製紙の東南アジア工場生産品(逆輸入品)と競合する事となり、供給過剰となったアジアメーカーは品質(強度)価格面で苦戦を強いられる様になるのではないだろうか。
また原料部分でみれば、中国の輸出割合が4割という背景から国内古紙回収率48~50%という数字は納得がいく。中国経済の輸出依存度が下がり内需が拡大すればおのずと古紙回収率も向上するだろう。中国の原紙国内生産量は古紙輸入禁止後も増加するとの見方も十分にできる。
今回のコロナ過の中で自国消費が主軸である日本に於いて紙パルプ供給に関する大きな問題はなかった。一方原料調達(古紙輸入)を他国に依存した中国に於いて価格の高騰など大きな混乱が発生している。サプライチェーンが複雑化する世界に於いて原紙のグローバルな調達は当然ながら発達するとは思うが、製品を梱包する包装資材のみが海外移転し逆輸入される構図にはリスクもあり違和感もあることは確かだ。
中長期的にみれば、中国でバージンや代替え繊維による原紙が増産され、東南アジアには製造業そのものが進出し現地の消費が伸びる。最終的に地産地消へ原点回帰する事も考えられるのではないだろうか。しかし両者が同時に進行する事は経済・投資効率的にも考えにくく、一時的に生産過剰になる期間が来るのではないかと危惧している。
米中貿易戦争x新型肺炎で脱中国は加速するのか? 東南アジアで増産される原紙に需要はあるのか?③