■ インド クラフト紙の原料に稲藁パルプ生産を計画
2023年4月8日
Central Pulp & Paper Research Institute(CPPRI)インド中央紙パルプ研究所は、農業廃棄物である稲わらからパルプを生産し、包装紙原料とするため、北インドに工場を建設する事を発表した。同取り組みはCPPRIが」パルプ・製紙・連合産業開発評議会(DCPPAI)の支援を受け研究開発を続け、技術を確立しており、今回デモ工場の建設にこぎつけた。10~15年ほど前までは、稲藁パルプは北インド、アンドラプラデーシュ州、チャッティースガル州などに於いて製造されていたが、稲藁に含まれるシリカ(ケイ素)が環境汚染の原因になるとして、稲藁パルプは衰退していった。そのケイ素問題を解決する技術が開発されたことで、稲藁は新しい資源として再び注目されている。 同研究所は開発したパルプは印刷用紙原料に使用する事は難しいが、クラフト紙などの包装用紙や、プラスチックカトラリーの代わりに、非プラ素材のカトラリー製造原料として利用できるとしている。また、稲藁パルプを原料に製造したクラフト紙にラミネートを施す事で、液体容器としても利用できる様研究を進めている。
新型肺炎の流行によってインドの紙パルプ需要は大きく変化した。パンデミック前はインド紙製造量全体の4~5割が包装用紙であったが、現在は7割を超えている。一方で筆記印刷用紙製造量は35%から20%にまで減少。新聞用紙は6%から3%と半分に落ち込んでいる。一方で、紙の消費量はまだまだ伸びシロがあると予想されている。現在のインド一人当たりの紙の消費量は年間約18kgと言われている。世界の先進国では200~250kgを消費し、世界平均は45kgと言われているため、インドはまだまだ紙消費量が少ない国となっている。今後経済成長に伴い、爆発的に消費量が伸びる可能性がある。 しかし古紙の回収量は30%と低く製紙原料にも乏しい国である為、将来の製紙原料確保と、その研究開発は必須となっている。
中国の紙パルプ増産に伴い、世界のパルプ相場は乱高下する様になった。古紙と違い、計画的に植林、生産されるパルプは比較的コストが安定している原料であったが、今後古紙同様パルプも価格変動が激しくなることが予想される。稲藁は日本に於いても、農業廃棄物として発生しており、国内での稲藁パルプの開発はできないものなのだろうか。