■ 古紙が輸入禁止となる中国に於いても段ボール設備の増強は続く
2020年8月
湖北金鳳凰紙業(ゴールデンフェニックス社)は35億元(530億円)を投資し100万tの段ボール原紙を増産する事を発表した。 同社は2006年設立の米中合弁会社で現在従業員1000人、年産130万t(内50万t強化中芯)の生産能力を有する中堅新興メーカーだ。
朕盛紙業は福建工場にて年産60万㌧のマシン(PM10)を稼働させた。抄紙幅8.66m、マシンスピード1200m/分 Valmet社製の最新鋭マシンを採用。 同工場は5台体制となり総生産量は205万㌧/年となる。同社の古紙輸入ライセンスは12万3430tで前年比50.7%となっている。来年の古紙輸入禁止を受けバージンパルプで製造したKLBへの転換も計画しているという。
8月初旬玖龍社も広東省にある東莞工場にてPM43を稼働させた。坪量75-140g/㎡、年産60万㌧のテストライナーマシンで現地回収古紙を使い製造する。建設開始当初19年中旬稼働予定であったが、中国政府の環境規制方針の変更の影響を受け度重なる延期により稼働が遅れていた。 PM43号は同社にとって今年2機目の稼働となる。1期目は先月のレポートにも記載した3月に稼働を開始した河北省工場のPM41、年産50万㌧のテストライナーマシンだ。 この2機の稼働によって同社の中国国内の生産量は1,620万㌧/年に拡大した。さらに21年末までにマレーシアに於いて年産55万㌧のライナーマシンを稼働予定としており、用地の取得拡大も進んでいる。
段ボール需要は他の業界と比較して今回の肺炎の影響が軽微で済んでいる。日用品や巣ごもり需要による通販の拡大が要因だが、工業品、輸出、観光・サービス関連の減少もあり平均1~2割前後需要が減少している。
またテレワークの浸透、自動車のEV化など産業形態の変化により肺炎の収束後も完全に需要が戻らない懸念も大きい。過去GDPに連動し包装需要は拡大したが、今後も各社が予測した通り需要は成長を続けるのだろうか。
1990年代、誰もが印刷用紙需要は将来的にも安定成長を続け2010年頃には需要は大幅に増加していると見込んで各社増産を発表していた。ところが実際2000年以降のIT進化により需要は減少している。
今回の肺炎流行に於いてペーパーレス化、在宅勤務、EV化など世の中の変化が少なくとも5年は前倒しされたのではないだろうか。段ボール・包装需要に於いても今後も順調に成長すると期待するのは危険だと感じている。世界中で増強される段ボール製紙設備に近い将来超生産過剰状態が発生するのではないか心配だ。