継続する世界の段原紙増産 19年から3年で5,000万㌧以上

  ■ 継続する世界の段原紙増産 19年から3年で5,000万㌧以上

2022年1月3日

世界で段ボール原紙の増産が加速している。中国の古紙輸入禁止政策を受け、東南アジアで製紙工場への投資が進み、2019年からの3年間で1000万㌧以上が稼働をか開始した。特にマレーシア政府はこの製紙の脱中国ニーズをつかむべく、外資系の誘致政策(税優遇や独資での企業を認可)に製紙業を加え中華系企業を強く誘致した。 それにより玖龍社を始め山鷹国際や景興紙業が次々と製紙工場の建設を決定し、490万㌧以上の新設工場が完成した。日経企業である王子HDも2号機を増設している。さらに今後数年間で600万㌧以上の増設が控える。

欧米でも堅調な通販需要に後押しされ段ボール原紙の増産が進む。特に需要減から停機していた新聞マシンからの転抄や、中央アジア新興国での増産も増えてきた。原紙輸入国であったトルコでは200万㌧近く新マシンが稼働し、欧州全体では700万㌧も増加している。

北米でも同様だ。従来木材パルプから段ボール原紙を製造する事が一般的であったアメリカでも、古紙を主原料としたテストライナーマシンが次々と稼働を開始した。通販需要の高まりによりテストライナーの需要が増えた事や、中国が古紙の輸入禁止措置を発表した事で余剰が予想される国内古紙を有効利用しようという動きが広がった。今後も400万㌧近い増産が控えている。

驚くのはこの世界的な段ボール原紙の中で、中国が最も増産しているという事実だ。3年間で2,391万㌧もの製造能力が増強され、今後も4,000万㌧近く増産計画が発表されている。経済発展による内需の拡大と、脱プラニーズが紙包装需要拡大を後押しした。古紙が輸入禁止となった事で深刻な原料不足が予想されたが、他国で古紙に加工を入れた再生パルプの輸入と、木材パルプ使用率を増やし強度の高い段原紙を生産し始めている。古紙化する米国と逆行する動きだが、本来アメリカはカナダより木材資源が潤沢に手に入ることに加え、古紙の発生国でもある。対して中国は古紙も木材資源も不足している。この大増産に必要な原料の確保は近い将来大きな課題となるだろう。

インド・ロシアでも段原紙の増産が発表されている。インドは17年のGST導入により長距離物流が発達を始め、包装需要が高まった。ローカル企業を中心に新しく600万㌧以上が稼働した。ロシアに於いても同様だ。ロシアは本来木材資源が豊かな国で丸太やパルプを輸出していたが、経済発展により段ボール需要が高まった。新聞マシンなどを転抄し段原紙を増産している。この両国は内需がタイトな中で中国向けの輸出を増やしている事も特徴的だ。国内に売るより中国に売った方が高く売れる上、立地柄巨大な中国需要を取り込む事は彼らにとって必然な事だった。両国は古紙の回収システムが整っていないが、古紙の関する輸入規制も行っていない。訪米の安価な未選別古紙を利用し、競争力のある価格で段原紙を供給している。

2019年以降、世界で5,500万㌧もの段原紙が増強され、今後5年間でさらに6200万㌧の増産計画が発表されている。近い将来超供給過剰な時代が訪れることは明確な事実ではないだろうか。

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