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深刻な海上コンテナ不足と物流の停滞

shortage of china container

  ■ 深刻な海上コンテナ不足と物流の停滞

2020年11月25日

コンテナ不足が一段と深刻化し、すでにBooking済みの本船予約も抜港(本船が寄港しない)や空コンテナ不足によってキャンセルされ、新規の本船予約も非常に取りづらい。さらに海上運賃は急激に上昇し、数か月前の10倍ほどの運賃になっている航路もある。運賃は今後さらに値上がりすると思われ、金額の問題ではなく運送そのものができない状況になりつつある。このコンテナ不足の解消にはまだまだ時間がかかり、早くて旧正月明け最低でも半年近くは要するものと思われる。

コンテナ不足の要因は大きく分けて5つある 

  1. 欧州、米国、豪州にコンテナが滞留し循環していない事。
  2. 本船の便数自体も減便となった上に、豪州など荷役が遅れている港で足止めされている本船が多数あること。
  3. 船会社が肺炎蔓延初期にリースコンテナを大量に解約した事。
  4. 中国等経済活動を再開した国とそうでない国での荷動き量に差が広がり、コンテナインバランスが崩れている事。
  5. 中国発の海上運賃が高騰し船会社が中国へ空のままコンテナを回送する事を優先し新規Bookingの受付を渋っている事

が原因となっている。

 新型肺炎による港湾労働時間の制限と大統領選挙

欧米でのコンテナ滞留の原因は、肺炎の流行により港湾労働者の出勤人数や労働時間が制約され荷役可能量が大幅に減少したことにより本船からの荷下ろしが滞っている事があげられる。国慶節前の中国からの出荷ピークもかさなり、米国西海岸では港湾の混雑による沖での荷役待ち係留は平均4~5日に及んでいる。

また米大統領選も重なり有給休暇をとる港湾労働者が多かった事や、肺炎の再拡大により内陸へのコンテナ回送・デバン作業に時間がかかり、特に州を跨ぐ場合1週間以上空コンテナが返却されない事も重なった。船会社は状況を改善させるべくコンテナをできるだけ早くアジア・中国へ回送する為に空のまま本船に積み出航させているという。

 米国からの帰り便は空コンテナを回送

米国からの中国向け輸出は穀物などが主流となるが、穀物畑のある内陸部へ空コンテナを回送バン詰めし港に戻ってくるまでさらに数週間、重量貨物であるコーンなど満載すれば本船積載量も制約され、船足も遅くなることから船会社は重量穀物のBook ingを原則断っている様だ。米国から中国までの船足は通常約13日~18日かかるが、空コンテナのみの場合2日ほど短縮される。

またアメリカから中国への海上運賃は400-500㌦/TEU、中国から米国西海岸行きは3800㌦、東海岸行は4600㌦を超えておりさらに値上がり傾向にある。船会社は中国向けに無駄な荷役時間をかけず空のまま回送した方が収益性がよくBookingを断る原因となっている。米国から貨物を輸出する荷主は自ら船会社に運賃の値上げを申し出た場合に船積みを了承してもらう事ができ、平均で950-1250㌦程度の割増料金となっている様だ。

 豪州での港湾スト

豪州ではシドニーに於いて9月初旬より港湾ストが発生した。3週間程度のストライキにより荷役が最大6週間遅延し、現在も最大3週間以上の遅れが生じるなど物流に大きな支障をきたしている。賃上げストで港湾と労働者との妥結には至らなかったが、医療物資の輸入に支障をきたしたことから労組側から10月1日にストを中止する事を発表した。

同港では5万コンテナが港に滞留しており、湾外に荷役待ちのコンテナ船が多数待機している。港湾遅延費用も日に数百万円発生している模様。現地では輸出入業者に300㌦前後の追加料金を徴収、台湾から豪州行の航路は200~300㌦の港湾混雑サーチャージを課す。

 シンガポール・釜山等主要経由港での混雑

さらにシンガポールや釜山など主要トランジット港に於いても中国からの急な輸出増により荷役が追い付かず積み替えが遅延する事態が発生している。シドニーやシンガポール、釜山などの港湾作業の遅延により東南アジアの本船スケジュールに大幅な乱れが発生し、抜港、BOOKINGキャンセルやコンテナ不足問題の深刻化を加速させている。 

 世界的な海上運賃の高騰

海上運賃の値上がりも東南アジアから欧州行は5190㌦、西地中海地域行は4690㌦以上となり平均で2,000㌦値上げ、アジアから地中海及び南アフリカ、バングラディッシュ、スリランカ行きは300~600㌦のピークシーズンサーチャージが課される見込みだ。世界的な海上運賃の値上がりとコンテナ不足により物流・サプライチェーンは混乱し、金額の問題ではなく「運ぶ事」自体ができなくなりつつある。

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