■ 段原紙輸出量がOCC輸出量を上回る 原紙輸出継続に古紙不足が加速
2022年10月30日
近年日本では輸出原紙生産の為の古紙消費量増加に伴い、OCC輸出量が減少し今年は原紙輸出量がOCC輸出量を超える様になった。古紙発生量そのものも年々減少傾向にあり、古紙回収量は段原紙輸出が増加し始めた17以降12%程度減少し、古紙の輸出余力は少なくなってきている。
このまま段原紙の輸出を継続した場合どのようになるかを予測する上で、台湾の古紙・段原紙需給をみると面白い。 台湾は昔から段原紙輸出国で、年間生産量の3割~4割にあたる70~100万㌧を輸出している。 また近年は古紙パルプの輸出も加わり、21年の段原紙及び古紙パルプの輸出量合計は115万㌧で対15年比1.7倍にまで増加した。 TOCCの輸出量はほぼ横ばいで年間10万㌧前後が輸出されているため、年間130万㌧以上の繊維が国外に流出することとなる。 台湾は段原紙生産に必要な原料を国内古紙だけで賄いきれず輸入に依存しているが、21年は国内OCC消費量の約半分となる142万㌧を輸入し、輸入量は15年比2.6倍にまで増加した。
現在の段台湾原紙年間生産量は280万㌧で、15年の225万㌧から7年間で約54万㌧(約24%)増加している。 国内消費量も同様に54万㌧増加しており、国内消費量の増加に合わせてその生産量を拡張させてきた。 しかし生産量の3~4割以上の段原紙及び再生パルプの輸出を継続した事で国内繊維が流出し、段原紙生産量の増加を上回る勢いで古紙輸入量を増やさざるを得ない状況となった。
日本は高い古紙回収率と商品と共に輸入される段ボールが回収されることで、OCCの回収量は段原紙生産量を上回っている。 以前はその余剰した2割の古紙を輸出している状態だった。しかし段原紙の輸出は計画的に生産され、戦略的に継続して輸出されるため古紙の発生量とは連動せず、古紙余剰分以上に繊維が輸出されることとなる。
15年の日本のOCC輸出量は189万㌧、段原原紙輸出量は30.7万㌧で合計219.7万㌧だった。 それが20年はOCCが193万㌧、段原紙は88.1万㌧と合計281.8万㌧が輸出され、21年はOCCが155万㌧、段原紙は99.4万㌧で合計254.4万㌧が輸出された。 段原紙輸出量が増加した事で繊維輸出量は2割以上増加したと言える。 昨年7月の市況レポートにも記載したが、段原紙+OCCの輸出量の合計と古紙問屋の在庫量は反比例しており、相関関係は非常に高い。
この二年間は余剰古紙以上の繊維が輸出され古紙問屋の在庫を吐き出す形で両者の輸出が維持された形だった。 今年も段原紙輸出量は昨年を上回り100万㌧超える勢いだが、OCC輸出量は昨対比3割以上減少する見込みとなっている。 この原因は消費減退による古紙発生減もあるが、2年間100万㌧近く段原紙の輸出が継続された事で、輸出に回せる古紙問屋の余剰在庫が少なくなった事も影響している。
仮にこのまま段原紙の輸出が数年間継続されれば、日本からの古紙輸出余力が完全になくなる可能性は十分にあると思う。 あるいは台湾の様に古紙を輸入する必要がでてくるかもしれない。
ただし、それが実際に可能かどうかは現時点では不透明だ。 候補となるのは米国古紙となるが、AOCCは日本の古紙と比べ繊維長が長く、製紙メーカーによってはスクリーンで弾かれ使えない。 また原質設備は選別された古紙に合わせて設備投資されている為、異物混入や選別状況を鑑みると輸入できるグレードはDLKやOCC#12に限定される。#11に比べ単価が高くなる上に、現在の為替ではとんでもなく高い原料となってしまう。 輸出原紙を造るためにそこまでやる意味があるかはわからない。 いずれにせよ日本の段原紙は生産過剰、国内需給維持のため一定量の輸出は継続されるため、古紙輸出量は減少傾向が続くだろう。