■ 中国政府 極度なインフレを警戒 物価安定に言及 上海パルプ先物市場が急落
2021年5月31日
5月13日上海パルプ先物市場価格が6%以上急落した。中国政府が物価の高騰や異常な先物原料市場にメスを入れる発言をした事が引き金となった。
中国はいち早く新型肺炎の流行から回復し、昨年のGDPも+2.3%のプラス成長だった。しかし海上物流の混乱と物資不足により原料価格が高騰し、物価が急上昇している。 パルプ価格も例外ではなく、昨年550㌦前後まで下落したNBKP価格が3月に1000㌦を超える水準まで高騰した。
中国国家統計局の発表によると、石油や銅、鉄鋼、農産品など原材料価格の急上昇を受けて生産者物価指数の4月の上昇率は6.8%で、2017年10月以来の大幅な伸びとなった。
中国の工場出荷価格の上昇は、世界経済のより力強い持ち直しや米国の大規模な財政出動、輸送費の大幅上昇などと重なり、世界的なインフレ要因となる事が懸念されている。
4月末、中国国務院は物価の過度な上昇を抑える必要があるとして、一部の鉄鋼製品の輸出関税を15~25%に引き上げる事や輸出税還付の撤廃、鉄や金属スクラップの輸入に対する暫定税率を無税化するなど、国内市場への供給促進政策を実施する事を発表した。 また輸入品の高騰を相殺する為、人民元高の容認など物価抑制政策も視野に入れて検討するとしている。さらに上海先物取引所は先物市場の異常な取引を積極的に調査し、不合理な価格変動を抑制する方針を表明した。
これを受け、上海先物市場の鉄鋼石や鋼鉄価格は大幅に下落、鉄筋先物は6.1%安、熱延コイルは5.4%、鉄鉱石先物は6.1%安となった。 漂白針葉樹パルプ先物価格(BSK 7月)も一時急落した。
7500RMBまで高騰していた先物価格は5月17日に6250RMB($905㌦)まで下落しており、VATや物流コストを差し引くと850㌦前後と現在の実物価格よりかなり低い価格帯となってしまう。
現在の中国向けパルプ価格はカナダ NBSK $980~1,010/㌧、北欧品$940~1,010/㌧、ラジアタパインやロシア産BSK は$960~980/㌧、南米のBHK $ 760~780/㌧となっている。
北欧内で流通しているNBSKは7月分も値上げが発表されており、1300㌦を超えている。急落した中国市場の影響はまだ出ておらず、物資不足と需要増から今後の相場がどちらに向かうか未だ不透明な状況が続く。