■ 中国政府対米報復関税発動:為替も介入か
2019年5月30日
トランプ政権の対中向け関税増税の発表を受け、5月13日中国国務院は対米報復関税を発表した。 6月1日より2493品目、輸入総額600憶ドルに対し品物によりにより10%~25%の関税を課す。 (別ページ中国報復関税リスト参照)
古紙の税率は昨年より25%で変わりはないが、今回段ボール原紙が16%から25%へ、古紙を主原料とする再生パルプが5%から20%へ増税となった。 一方でバージンパルプは5%で据え置きとなっている。
昨年古紙の輸入制限を睨んで中華系メーカーが北米のパルプ会社を数社買収した事が話題になったが、バージンパルプの税率は据え置きになっている事と関係があるのだろうか。
米中貿易戦争により中国国内の紙需要が弱い為、目下中国国内の原料不足による紙製品の第三国へのオファーは起こっておらずアジアの原紙価格は下落している。 今後も段ボール原紙の増税は市場へ大きな影響は及ぼさないと思われるが、日本からの原紙の輸出が滞り始めた事情もあり、「中国国内消費動向」と「秋需」には注意を払いたい。
今後の世界景気と紙需要に影響する米中貿易戦争の行く末は6月下旬に開催されるG20での話し合いによって解決できるかが焦点になるだろう。 トランプは今回の増税を「ささいな言い合い」としているが、中国政府は「米国の自国主義と貿易保護主義に対する報復で、お互いが解決に向かって相互尊重に基づき納得のいく合意に至ることを望む」とコメントを出している。
5月に入り人民元の対USDレートがおかしな動きをしている。 5月3日ドル/円相場がドル安で推移する中で人民元の対ドルレートは6.73から6.78へ1.0 %元安へと変動した。 米国が中国に対して追加関税を発表した直後には6.87USD/RMBまで下落した。
2000年以降急激に経済成長をした中国に対し米国は人民元の切上げと固定相場を止めるように圧力を掛け、中国の経済力を鑑みて7.0 USD/ RMB以下が妥当だとしてきた。 中国政府は世界からの圧力と人民元を基軸通貨へと押し上げるべく2005年管理変動相場という形で変動制を受け入れたが、以後人民元レートは急激に上昇、2015年には6.0~6.1 USD/ RMBまで元高となり輸出が前年度比8.3%減となった。
同年輸出不況に苦戦する中国政府が人民元の切り下げを行い国際社会からバッシングされたが、当時のレートも7.0 USD/RMBを超えない程度に利害各国に配慮したレートで調整されている。
今回中国側が課税した米国製品は600憶ドル、米国が課税した総額2000憶ドルには遠く及ばない。 中国政府が為替に介入したかは不明だが、増税分の損失は同等の為替操作で相殺できる為、報復関税では到底太刀打ちできない中国側が為替に手を出した可能性は否定できないだろう。
人民元レートの下落により中国国内古紙と原紙の円換算価格も下落し、日本からの中国向け輸出の足枷にもなりかねない為過剰に元安が進めばやっかいな影響がでそうだ。