■ 中国 パルプ価格上昇にKLB、高板価格強含み 段原紙需要は弱い
2022年1月29日
世界的なパルプ供給減によりBHK、BSK共に価格が上昇しはじめた事で、パルプベースの紙器原紙(アイボリー・高板等)の価格も価格が強含んでいる。 昨年年始よりコンテナ不足と中国需要によりパルプ価格は高騰、一時BSKは1200㌦を超える水準まで上昇した。しかし6月以降、中国のインフレ抑制政策により上海パルプ先物市場が下落した事をきっかけにパルプ価格は大きく値下がりし、パルプを原料とする高板、食品容器包装原紙なども昨年中旬の高値をピークに価格が軟化した。特にパルプを原料とする印刷用途カード紙は中国政府の「学習塾無償化政策」や「共同富裕政策」による需要減で4割以上価格が下落していた。 しかし、カナダの山火事や北欧UPM社のストライキなど供給源によりパルプ価格が再度上昇しはじめている。中国は旧正月前の不需要期で需要は弱い。しかしサプライサイドからの強い価格上昇圧力により、値上げを呑まざるを得ない状況となっている。1月の中国向けパルプ価格は$50-70㌦の値上げ、北米BSK$830-860、北欧 $810-850、ロシア産800-840でのオファーとなった。現在の中国国内ユーザー在庫は少なくパルプ小売り業者は先高観からパルプの在庫を積み増している。一方、中小印刷紙メーカーなどは旧正月以降も中国国内の印刷用紙需要は引き続き弱いとみており、在庫を持つことに慎重な姿勢だ。
パルプ価格の上昇に伴い、パルプを原料とする高板や食品容器包装原紙も価格が上昇を始めている。食品用途アイボリー原紙は1月に100RMB、2月の旧正月明けにも200RMBの値上げを予定している。しかし年末からAPPを始めサンペーパーなど大手製紙企業が大型のバージン紙器原紙マシンを次々と立ち上げており、需給から価格上昇に対する抵抗感も強い。
パルプ、高板価格の反転と相反し、段原紙価格は引き続き弱含んでいる。昨年秋口から電力不足による操短と原燃料価格の高騰により相次いで値上げが発表され、価格が急騰していたが、「独身の日」以降の需要は低迷。年末から年明けにかけて価格が軟化した。玖龍社は12月に値上げを発表していたが、同業他社の値上げ攻勢に引きずられる形で値下げを取り下げ、さらには値下げに踏み切った。旧正月期間中は大手各社長期休転を予定しており、在庫を減らし需給を調整する動きを見せている。 しかし、今のところ旧正月明けの原紙需給は不透明で、コンバーターやBOX工場は旧正月に向けて自社の原紙在庫状況を厳しく管理している。
一方、北米ではIP社を始めWestRock社など大手製紙企業がバージンベースKLBの値上げを発表した。 値上げ幅は約50㌦で3月出荷分から適応される。パルプ価格の上昇と底堅い需要を背景にサプライヤーは強気な姿勢だ。また欧州に置いても段原紙価格の値上げが発表されている。 欧州では環境投資などCO2排出削減に伴う値上げには比較的寛容で、各種原燃料価格が上昇する中値上げに対する抵抗感もさほど強くない。