■ ウッドショックで木材を「買い負け」した日本 中国のパルプ増産でチップ需給は?
現在世の中を騒がせている「ウッドショック」は米経済が新型肺炎から回復しつつある中で、低金利政策から住宅着工件数が大幅に増加した事や、海上運賃が上昇した事が大きな要因となった。また建材や家具などを製造する中国に於いても年々木材の輸入が増加し木材不足を引き起こしている。
日本の木材自給率は37.8%(林野庁)で必要な木材は輸入に依存しているが、ウッドショックによって高騰した木材を米国や中国など高くても買う国に「買い負け」しているのが現状だ。
中国の古紙輸入禁止と世界的脱プラ需要、海上運賃の上昇によってパルプ価格も昨年末から大高騰している。2018年には中国の爆買いによって古紙価格が高騰したことで、日本の製紙企業は古紙を高値で調達せざるを得なくなり、段原紙価格も二度にわたり値上がりした。
中国のパルプ増産は必ずしもチップ価格の高騰を招くとは言いきれないが、1000万㌧ものパルプ工場が稼働を開始すれば少なからずチップ需給に影響がでるのではないだろうか。 勿論2000年頃、印刷用紙需要がまだまだ拡大すると思われていた時代に苗付けされた植林が南米などに多く存在し伐採期を迎えている。
マレーアなど新規市場参入の可能性や非木材パルプの開発も進み、さらには新型肺炎によって印刷用紙需要はさらに低迷している事から需給が調整される要因が無いわけではない。 しかし代替え素材として紙への利用が拡大している竹パルプも竹林不足が懸念され始めている上に、ウッドショックが世の中を騒がせている昨今、チップの需給動向が紙パルプ業界に与える影響も気になる所だ。
パルプは需給によって価格が変動するが、必ずしも原料であるチップの価格と連動しているわけではない。 仮に中国のパルプ増産によるチップの獲得競争が中国製紙企業の爆買いを招き、価格の上昇が起きた場合パルプ価格も連動し値上げできるかは不透明だ。 自社植林を持たないパルプメーカーが中国に「買い負け」する懸念も無くはないのではないだろうか。