■ 中国で再び注目を集める竹パルプ
非木材パルプの開発に注力している中国だが、特に竹製品などの名産地である四川省や重慶に群生する竹の有効利用に注目している。中国国内の竹林面積は600万ha以上と言われており、竹製品の生産量は世界一位となっている。日本の竹林面積は約16万ha(林野庁)であることから広大な竹林面積であることがわかる。
竹のパルプ化に関する課題は上記でも記載させて頂いたが、中国ではパルプ原料としての竹の欠点を克服し、竹パルプ製品の品質を向上させるために、シリコン除去/シリコン保持などの新技術が開発されている。プレートまたはチューブエバポレーターを使用して、黒液濃度70%以上を確保している。またアルカリ回収率は95%と高く、焼却灰の除塵率は電界電気集塵機によって99.5%、再利用アルカリ自供給率はほぼ100%を実現した。
コスト面では地方行政が竹パルプ工場の建設や、技術的開発に補助金を出す、地元貧困層からの原料調達や雇用を条件に税金を軽減するなどしている。官民合弁企業の設立や民間に行政が出資、あるいは行政自らが竹パルプ工場を建設するケースもある様だ。四川省では回収ボイラーを火力発電所として公共事業投資で建設し、竹林原料基地の支援を行っている。運送コストは四川省や重慶市など竹林群生地域に隣接したエリアにパルプ工場を建設する事でカバーしている。
さらに中国地方政府は竹パルプ製品のブランド化に協力的で、国内線の航空機機内用品に採用されるなど、特に若い世代で環境意識から木材原料を使用しない竹パルプ製品を利用するといったトレンドもある。
2013年の中国国内竹パルプ生産量は約137万㌧で、2019年には209万㌧に達した。家庭紙市場における木材パルプの割合は80%以上ではあるものの、竹パルプも2012年の5%から10%以上に上昇し、竹パルプの家庭紙使用量は年々増加している。
生産企業の地域分布は、四川省が生産能力の約65%を占め、大型・中型企業だけで12社160万㌧の生産能力となっている。その他の地域も貴州40万㌧、重慶は20万㌧、広東省は20万㌧、江西省は15万㌧、広西省は8万㌧と竹林の多い内陸部に集中している。 2020-22年までに建設中または計画中のプロジェクトは複数あるが、今後3年間で120~140万㌧の生産能力が追加される。 このうち、四川省は100~120万㌧を増強し、貴州省では30~40万㌧の生産能力が増強される見込みだ。
一方で竹パルプ紙産業は急速に発展し竹原料の需要は急速に増加しており、原材料不足が顕在化している。 四川省を例にとると、現在、四川省の竹林面積は約120万ha、そのうち製紙用竹林は約80万ha近くで、理論的には260万㌧のパルプ生産能力を支えている。事業を持続的に行う事を念頭に考えると実際に使用できるのはその50% 程度に留まる。 四川省の2019年の生産量は132万㌧に達し、今後3年間で100万㌧以上の生産能力が建設中となると、竹パルプや製紙原料の供給不足は、緊急の課題となる。
中国全体のパルプ総消費量に占める割合は2.86%に達し、未晒竹パルプ生産量は約98万㌧、漂白竹パルプは102万㌧となった。今後古紙の輸入禁止により包装用紙への需要が高ったことで晒竹パルプの生産増強も加わり、さらに竹パルプ増産は加速するものと思われる