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パルプを大増産する中国とチップ争奪戦 ⑤

竹林

  ■ 木材に変わる非木材パルプの開発

中国製紙メーカーは環境規制の始まった早い段階から古紙代替え原料の調達を模索していた。その一つとして非木材パルプに注目が集まっている。中国では木材パルプが普及する以前、非木材パルプを主原料として紙を製造する技術が発達していたが、環境負荷やコスト面から古紙や木材パルプへと置き換わっていった経緯がある。

中国政府の打ち出したW禁(古紙の輸入禁止とプラスチック包装原料の使用禁止)によって原料不足が生じる一方で紙製包装材の需要が高まり、古紙に変わる原料調達の必要性が強く意識される結果となった。

2017年に始まった環境規制によって排水処理など国の厳しい基準をクリアする事が古紙の輸入ライセンスを更新する条件となった事で、大手製紙企業は排水処理や環境に対するノウハウを学習し、政府の要求する水準を正確に理解する事ができるようになった。 さらに技術の発展により非木材パルプの環境負荷問題を解決する技術が開発された。 

また中国政府もW禁政策による副作用を解決する方法として国内の廃材活用と地元貧困層の雇用活用ができるという利点から、非木材パルプの開発に補助金をだす方針を打ち出しコスト面は政府がサポートする体制をとっている。 中国の竹林は世界一位の面積があり、唐辛子やコーンの茎、藁など農業廃材や剪定廃材などを利用した非木材パルプの開発に官民両者で取り組みを始めた形だ。

 竹パルプの利用価値 

日本の非木材パルプの使用比率は0.04%であり、圧倒的に木材パルプの比率が高い。 FAO(国連食糧農業機関)統計によると、世界の非木材パルプの生産量比率は約11%となっており、その約80%は中国・インドで生産されている。 特に発展途上国での製紙原料に占める非木材パルプの比率が高く、先進国は低い傾向にある。 

非木材パルプが先進国に於いて普及しない理由は、① 非木材資源は伐採、保管、運搬や栽培などの継続性の観点からコストが高い事。② 木材パルプは黒液の回収や排水問題など環境負荷問題の解決手段が確立している事 ③ 品質面(繊維長)など非木材パルプは木材パルプに劣る事が挙げられる。 

その点竹は地下茎を伸ばして生育地を広げることから、伐採後の再苗付けの必要がない。また1年で高さ10m近くの高さに生長する為、CO2の吸収率が高く、再生サイクルが短い事は安定的な繊維調達として非常に効率的な植物だ。 さらに表皮を剥離する必要がない上に繊維長、アスペクト比、繊維状細胞壁の空洞率において広葉樹繊維に匹敵し、稲/麦わら、葦、バガスなどの他の非木材繊維と比較してよりパルプに適した繊維原料であるといえる。 

世界の竹林地の約8割がアジア・太平洋地域に分布しており、特にインドと中国の竹林面積はアジアの竹林の約7割を占め、豊富な非木材資源となっている。 

一方で、竹の水分保有率は一般的な木材と変わらない反面、垂直方向に成長する為、幹が太くならず中も空洞で伐採・保管や運搬に非常にコストが掛かる。 さらに各段に早い成長スピードで日光を遮り他植物の生長を阻害する事から、竹林が広がると極端に生物多様性が落ちてしまう問題点がある。 

保水能力が低く、水源涵養や土壌などの環境機能に与える影響も大きい。竹林は手入れや剪定など適切に維持していかなければ逆に環境を阻害してしまうのだ。 しかしその使用可能用途は非常に狭くチップバイオマス燃料として使用するにはカリウム保有量が高い上に、塩素濃度も高い為炉を傷めてしまう。パルプとして使用する場合、木材チップに比べ灰分やシリカ(SiO2)の含有量が比較的高い為、環境負荷が高いことが課題となる。 

竹林が小規模分散していることも効率的な伐採ができない原因となっており、放置竹林が環境問題となる事も少なくない。 排水環境問題やコスト面をクリアし、パルプとして有効利用する事は周辺の環境維持に貢献する上に、良質な繊維資源の確保につながる為その利用用途が模索されてきた。

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