■ 中国企業に乱伐採されるロシア森林
中国の環境規制のはじまった2017年以降、中国と国境を面し木材資源の豊なロシアでは中国企業によるシベリア森林の乱伐採が問題となっている。 かつてのロシアは、中国へは木材をほとんど輸出していなかった。それが今では、中国の総輸入額の20%超をロシア産が占めるまでになった。中国企業の中にはシベリア森林の借地権を1haあたり27セント/月という破格で購入し大量の木材資源を手に入れている企業もある。
当初は沢山の木材加工会社を建設し地元住民の雇用をする事や、植林など持続可能な事業を行う事も約束されおり、整備されていない森林は森林火災の原因となるリスクもあることから、地元住民からも中国系企業の進出を歓迎する声も多かった。しかし実際には伐採企業が2社設立されただけで、その木材のほとんどがシベリア鉄道を利用し中国に運ばれた。また植林も全く行われず、乱伐採が横行した。
一方でロシアとシベリア鉄道を介して国境を接する満洲里は、木材加工や木材製品生産の中心的な拠点の一つとなった。かつて、そこは貧しい遊牧民の集落だったが、今では家具や木材チップを製造する中国企業が多数進出し発達している。ロシアでは森林伐採に対する抗議行動がシベリアや極東地域で起き、2018年には8人が逮捕される騒ぎになった。メディアでも国益を損なったとして取り沙汰され、契約に関与した議員が辞職に追い込まれるなどの問題に発展し、プーチン大統領は22年1月1日以降に針葉樹や希少樹種の未製材品(未加工品含め)を輸出禁止するほか、木材の消費によってロシア経済を活性化させるビジネスの開拓も禁止することを決定した。
2020年中国税関総署は輸入木材から害虫が見つかったとしてオーストラリア産の木材輸入を禁止した。またロシアは2022年にから中国向け木材の輸出を禁止する。また米中貿易戦争により米国からの木材輸入量も減少している。税関統計によると、2020年にオーストラリアとロシアから輸入された丸太は、それぞれ456.5万㎥と634.1万㎥で、針葉樹の原木輸入だけでも相当量の供給不足が予想される。
2019年の針葉樹丸太の輸入は、ニュージーランド、ロシア、オーストラリア、ドイツ、米国、カナダからが主であり、左記6か国が輸入量全体の79.7%を占める。 2020年は、ドイツからの針葉樹原木の輸入が急速に増加し、前年度比で160%となった。 丸太の輸入総額に占める割合は2019年の8.19%から2020年には21.29%にとなり、ロシア、米国、カナダの丸太輸入減少を相殺した。2021年に入り中国はニュージーランドとの自由貿易協定を見直し、同国からの木材輸入を今後10年間無税にする事を決定している。
しかし、ニュージーランドの丸太伐採量は3,600万㎥、輸出量は50%の1800万㎥だった。ニュージーランドの丸太輸出可能量はすでに限界に近く大幅に増加するほどの余裕はなく、ロシアからの輸入量600万㎥を置き換える事は難しいと考えられる。一方で輸入量が増加しているドイツの丸太は2021年1-2月に230万㎥に達した。
2021年は通年で約400万㎥の輸入増が見込まれている。 しかし、中国が購入できる丸太の市場価格は限られており、ドイツ国内に於いて低価格での丸太販売を停止するよう声が上がっている。 ドイツは森林伐採制限を可決し、伐採を制限する姿勢をみせている。
中国は世界一の木材加工国でもあり、近い将来木材不足が懸念されている。各国製材業界でもそのニーズに対する期待がでている。