■ 中国の製紙用ウッドチップ輸入元候補国
中国のウッドチップ調達先として森林資源の豊富なマレーマレーシアも有力な候補国だと思われる。マレーシアの国土面積は約3,280万haであり、森林面積は約1,809万haで森林率は約55%と木材資源の豊かな国だ。
中国の主張する領海問題で両国の関係は緊張しているものの、製紙産業のマレーシア政府との関係は良好だ。2018年8月にマハティール首相は中国玖龍社を訪問、同社会長へ中華系製紙産業の投資を奨励することを直接伝えている。 従来マレーシアは天然ゴムや木材資源が豊富だが、人口が少なく外資系の投資に依存し経済成長してきた。
表向き古紙の輸入規制を検討するなど環境を意識した政策も発表しているが、今後の新しい海外投資主として「環境規制」により海外進出を進める中国系民間製紙メーカーに白羽の矢を向け強く誘致を進めている。
製紙産業も政府の指定する特定強化業種に明記されており、一定の要件を満たせば外資系100%企業も税制優遇の対象となる。 また2018年にマレーシア木材産業協会は、中国の広西チワン族自治区林業部との間で技術交換協力協定の覚書を交わし、植林作業訓練などで技術を共有する方針を打ち出した。
その後マレーシア政府は大規模森林計画に基づき大規模な植林開発を行っており、当時の計画では実際に丸太として伐採されるのは21年初頭の予定で、70万立方メートルの出荷が見込まれていた。
さらに話がつながるのは今年3月に玖龍社が広西省チワン族自治区に年間800万㌧規模の超大型製紙工場を建設する事と、マレーシアに54億リンギット(約1400億円)もの投資をする事を発表した事だ。
広西省の工場には同社の計画するパルプ増設の中で最大規模の50万㌧の化学パルプ工場と140万㌧のBCTMPラインが含まれる。 工場が建設される北海市は沿岸部の港町でベトナムと中国の国境に位置する。中国から東南アジア向けの輸出はもちろん、再生パルプなどの原料を輸入するには最も適した地域でもある。
マレーシアでの投資は12億リンギットでパハン州ベントンにて地元パルプ企業を買収し、残り42億リンギットはセランゴール州バンティングに55万㌧のライナー及び中芯、木材パルプ工場を建設する。これにより2180人の雇用が生み出され、90%が地元住民の雇用となることからマレーシア政府は同社の投資を歓迎している。同社は年間48万㌧の古紙パルプ製造能力を手に入れ、パルプの原料となる木材資源の入手ルートも確保した。
木材チップの輸出入には専用チップ船と、水深の深い港が不可欠となる。玖龍社は中国に自社バースを所有するなど、中国側に於いて政府との関係やその運用ノウハウはすでに持っている。 マレーシア側の主要港も多くのコンテナバースがあり、水深も15~20mと深い。港湾面積も広く内陸への陸路も整備されている。チップの輸出実績は少ないが十分に開発余地がある港となっている様だ。
さらに直接的に関係あるかはわからないが、中国大連の造船会社が中国船社などから全長200m以上、排水量62000㌧級の超大型チップ船を12隻以上受注している。