■ パルプを大増産する中国とチップ争奪戦 ①
中国では今年から古紙が輸入禁止となり、代替え原料として中国大手製紙メーカーは海外に再生パルプや段原紙の工場を建設し輸入が急増した。しかし第三国で古紙を再生パルプに加工・製造し中国へ持ち込む方法は明らかに非効率で高コストだ。 また段原紙が大量に輸入される事は製紙企業にとって望ましい状態ではなく、次なる対処方法として中国製紙企業は国内に多数のバージンパルプ工場と段原紙工場の建設を発表した。
今後数年以内に玖龍社を始め700万㌧以上のパルプ工場建設が予定されており、国国内での原料調達に原点回帰する動きを見せている。再生パルプは今後数年間で500~800万㌧市場にまで成長すると言われているが、あくまで中短期的な対処措置でありやはり地産地消へと戻ると予想される。海外に建設された再生パルプ工場は将来的に段原紙ラインが組み込まれ、その原質設備へと形を変えていくのではないだろうか。
玖龍社は次期経営計画に於いて、国内のパルプ及び紙板紙生産量を大幅に増強する事と今後段ボール生産能力を12億㎡まで引き上げる目標を発表し、グループの一貫化を強化する方針を打ち出した。原料問題を含め川上政策は一旦解決、川下への投資を強化していく方向へ舵を切り始めている。先進国の一貫化率は欧米で70~80%、日本は約50%だが、中国は9%に過ぎず中国大手製紙企業は次なる成長戦略としてグループの一貫化を課題視していた。
しかし、原料問題ははたして本当に解決したのだろうか。2017年の中国の古紙輸入量は2700万㌧、そのうち1500万㌧が段ボール古紙の輸入となっており、古紙が輸入禁止となることで生じる原料不足は目下再生パルプや木材パルプ、段原紙の輸入で置き換わろうとしている。そこに中長期的な原料調達政策としてバージンパルプの中国国内生産を増強しようとしているわけだ。中国製紙企業は自社植林を持たず、仮に植林を始めたとして、その用地の確保や広葉樹で8年~10年、針葉樹で30~50年もの成長サイクルを考えると今後建設される700万㌧もの木材チップが突如生み出されるわけではないことは明確である。
かつて中国は国土の27%が砂漠であり、一人当たりの森林面積は世界171位、木材資源に乏しい国だった。昨今は植林が進み森林率は国土の22.1%まで増加しているが、19年のパルプ消費量3,581万㌧のうち2,317万㌧を輸入に頼っており、紙・板紙の生産量は世界一の生産国となったが、パルプは自国生産できていない事がわかる。
その中国が古紙輸入禁止という国家の政策的背景から強制的にパルプの生産増強に至ったわけで、近い将来木材チップの調達競争と価格の上昇が発生するのではないかと感じている。