■ インド原紙の購入を止めた中国③ インド国内の段ボール市場
インドの人口は14億1200万人で、23年には中国の人口を超えると予測されている。GDPは3兆1733億㌦で世界6位となっており、一人当たりGDPは2100㌦、過去10年間の平均GDP成長率は6.9%と高い水準で成長を続けている。 紙パルプ産業は、登録製紙会社約400社、紙・板紙生産量は年間1800万㌧で、内段原紙生産量は800万tとなっている。 段原紙の国内消費量は年間750万tで輸出量は約90-100万t、輸入量は10-13万㌧に留まっている事から需給は45万tが慢性的に不足している事がわかる。 ICBMAのデータによると17年の段ボール箱市場規模は、70億㎡で、大手コルゲーター350社、中小ボックスメーカーは2.5万社を超える。インドは道路インフラが未成熟であることや、広大な国土から長距離輸送が必要で7ply(3層)など複層式の段ボールの使用率が高い。日本の段ボール市場が900万㌧/145憶㎡市場であることに比べ、インドは生産平米に対し原紙使用量が多い事からもそのことが伺える。
国民一人当たりの紙・板紙消費量は年間14kg/人で世界平均の52.3kgよりも少ないものの、段ボールの消費量は10年間で4.3kgから8.6kg/人と増加、特にeコマース消費はコロナ禍で2倍となった。食品包装市場は2016年の5億3,000万ルピーから 20年には7億8,000万ルピーに成長している。 今後も年率平均6.7%以上の成長が見込まれ、21年に1,077億ルピー(13億ドル)だったか紙パルプ市場規模は27年に1,569億(19億㌦)ドルに達すると予測されている。
成長著しいインドの段ボール市場だが、昨今の原紙価格の高騰や副資材の値上がりを受け段ボール製造業者の40%が倒産の危機にあると言われている。 主原料である段原紙価格が1年間で40%上昇した事に加え、一部の特殊紙は価格が倍になった。また昨年10月対比でスターチ50%、人権費25%、ボイラー燃料40%、電力20%、インク25%、ステッチャー鉄針25%、フィルム類16%、マシンスペアパーツは50%値上がりし副資材の価格も高騰している。 加えて貼合機や原紙の品質が悪いため、貼合不良などによる平均ロス率は15~14%を超えるという。 一方でチャイナプラスワンの影響や、新型肺炎の流行がきっかけで外資系通信販売企業や日用品製造業者が増えた事は大きな変化をもたらした。 外資系企業の求める品質はインド企業には厳しく、IKEAやアマゾンは反りや臭いのある段ボールを受け入れないため、段ボールの品質改善が進むきっかけとなった。
インドは今後も著しい経済成長が続き、それに伴い包装需要も拡大が見込まれる。しかし最新設備の整う中国にはまだまだ及ばない。中国向け段原紙需要の減退や国内段ボール企業の現状をみると、今後インドが国際マーケットで戦っていくには、設備投資による生産の効率化と品質改善が必要だと言える。 さらに今後世界的生産設過剰によって原紙需要が緩む事や、欧州からの古紙輸出量は減少する事が予想され、インドの製紙業界にとっては逆風が続く。 しかしインドが中国に代わる古紙の消費国になるにつれて、インド市況がアジアの段原紙や古紙価格に影響を及ぼすようになってきている事は事実だ。インドが中国のように安定して古紙を購買可能かはまだ見通せないが、インドのGDPは2030年には18年比3.28倍にまで拡大するとの予測もある。14億人もの人口ボーナスによる消費拡大と、インフラや生産設備の改善による内需拡大に期待したい。