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変化する中国段原紙輸入市場 古紙完全輸入禁止も競争は激化

変化する中国段原紙輸入市場 古紙完全輸入禁止も競争は激化

変化する中国段原紙輸入市場 古紙完全輸入禁止も競争は激化

  ■ 変化する中国段原紙輸入市場 古紙完全輸入禁止も競争は激化

2021年9月17日

今年から中国は古紙が完全輸入禁止となり、それに伴う段原紙の輸入需要が膨らむと期待されていた。実際日本からの段原紙輸出量は年々増加し、今年は年間100万トンに迫る勢いとなっている。しかし中国に対する売りにくさを強く感じているのが正直なところだ。

5月以降中国政府によるインフレ抑制への取り組みと、新型コロナウイルスが再び広がる中、大規模な行動制限を繰り返す対応手法に中国経済と包装材の需要に陰りが見え始めている。今年は古紙の完全輸入禁止によって強い段ボール原紙輸入需要が生まれる事が期待されていたが、物価抑制政策が発表された5月以降、段ボール原紙の輸入量は伸び悩んでいる。

中国原紙輸入量推移

さらに中国の輸入通関統計をもとに輸入元の変化を見て行くと、ラオスとマレーシアからの輸入が急激に増加している事がわかる。ラオスではサンペーパーが昨年末よりSCPと段原紙マシン2機を稼働、100万t規模の生産能力を整えた。またRCEPの合意により同国からの段原紙輸入は関税が免除されている。 マレーでは玖龍紙業を始め景興紙業や理文社が製紙工場を建設。すでに100万㌧以上の段原紙ラインが稼働しており、3年以内にさらに数百万㌧の増産が予定されている。 カンボジアに於いても理文社が工場を建設すべく土地を取得した。

そういった中華系企業による逆輸入量は20%にまで達しており、消費が伸び悩む中さらに外資系が入り込む余地が縮小している。 

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中国段原紙 輸入元別統計

意外なことに古紙輸入禁止が発表されて以降も、世界で一番段原紙の増産を行ったのは中国だ。2018年以降中国国内で1,000万㌧以上も生産能力が増加している上に、25年までにさらに1000万㌧以上の増産が相次ぐ。 模造パルプなど代替え原料の開発や再生パルプの輸入によって原料を補い、新マシンをどんどん稼働している。再生パルプの輸入量は月単位増加しており、6月は単月で25万㌧を超えた。 

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 インド・ロシアからの輸入も増加

インド・ロシアからの輸入も増加している事も大きい。両国は急激な内需の発展によって段ボールが不足しており、近年段ボール原紙の増産が相次いでいる。特にロシアは新聞マシンを段ボールに転抄する事で素早く増産体制を整え、シベリア鉄道を通じ中国に輸出している。 両国とも内需がタイトにも関わらず輸出を増やしている背景には、国内に売るより中国に輸出した方が収益がいいことが理由にある。両国の需給は変わらず非常にタイトな状況だ。中国に段原紙を売るには、古紙が高騰し原料価格が上昇する中でも収益を確保できるロシア・インド勢と競争しなければならない状況となっている。 

一方で古紙の輸入規制によって原料調達コストが跳ね上がったインドネシアは、その原紙輸出競争力を失い中国向け販売シェアを落としているのが伺える。

今後さらに増えるであろう中華系企業による逆輸入と、国内の段原紙増産。さらにロシア・インドからの輸入も増加している中で、中国向けに段原紙を売るのは難しくなりつつある。特に中国大手メーカーの生産する高強度ライナー以下のテストライナーは競争が激化し価格が軟化する可能性が高い。

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