■ 経済低迷下で増産を続ける世界の段ボール製紙業界
2020 年8月
新型肺炎の流行が長期化する中でも各国の段ボール製紙設備の増強は継続している。肺炎や経済状況により計画が遅延するケースもあるが、今のところ一度発表した計画を白紙に戻すといった話はない様だ。むしろ印刷・新聞用紙の低迷によってさらにマシンの停機、段ボールへの転抄計画が発表され、段ボール原紙の世界的増産は加速している。
スロバキアで30万tの白ライナー増産を計画していたMONDI グループは、新型肺炎の影響により稼働が遅れ2020年末としていた稼働予定を2021年の半ばと延期するものの計画は進行中と発表した。工事の遅延と予定よりも土木建築費が嵩んだことにより3000万€(34億円)の追加投資が必要となる見込みだ。
カナダのDomtar社は新型肺炎の流行による印刷用紙の需要減は回復が困難と判断し、大規模な上質紙生産設備の縮小を発表している。同社のアメリカにあるポートヒューロン及びアッシュダウン、キングスポート工場の上質マシンを停機し合計65万5千tの生産縮小を行う。その内キングスポート工場へ3億~3億5千万ドルを投じテストライナー及び中芯マシンへと転抄する。稼働予定は23年第一四半期とし生産能力は54万5千㌧/年にも及ぶ大型マシンとなる予定だ。
イタリアの段ボール一貫メーカーであるPRO-GEST社はマントヴァ市に増設を発表していた新設マシンを10月に稼働開始する事を発表した。70-160g平米のテストライナーを抄紙し年間生産量は40万㌧。本来2019年の9月に稼働予定であったが、工事の遅れと新型肺炎の流行から5月、9月と度重なる延期を発表していた。市場は少しずつ回復傾向にあるが、同社新マシン稼働が価格回復の弊害になることが懸念されている。