中国の環境政策:「藍天2018」効果に驚かされる

  ■ 中国の環境政策:「藍天2018」効果に驚かされる

5月下旬から6月初旬にかけて中国の客先を訪問してきた。以前の中国とは大きく変わって北京や天津では本当に青空が広がっており東京の空と何ら変わらないきれいな「空」に驚愕した。 

 中国ならではのスケールの大きさ

驚いたのは青空だけでなくEV車の多さだ。一般車もさることながら、バスは殆どがEV車で町中に昔の路面電車の様な電線も走っている。新型のEVはそういった電線も必要ない様だ。北京市は2017年中に4500台のEV路線バスの導入、一般車両にも税制面での優遇を施し世界一のEV大国となった。またそのバスのバッテリーは急速充電が可能で充電時間はわずか15分で完了するとのことである。

国を挙げた環境意識、対策にあっけを取られる中、車でどこに行こうと、新幹線で数時間走っても永遠と植林された林が淡々と続いているのに気付いた。幹線道路や鉄道の路肩には植林をしなければならないという法律があるとのことで、中国の環境に対する「本気」を強く感じた。

中国では環境汚染と同時に黄砂の広がりによる砂漠化も問題視されており、植林はそういった砂漠化に対する防砂対策でもあるという。ついこないだまでPM2.5や排気ガスで交通規制がかかるなど大気汚染の酷い状態が短期間でここまで改善するのには国を挙げた環境対策があってこそのことだろう。

昨年の「ナショナルソード」から始まった環境規制による古紙輸入禁止は、製紙産業を衰退させ中国にとって経済面でのマイナス影響を及ぼすのではないかと考えていたが、こういった中国の環境対策を目の当たりにし、製紙産業の成長は中国政府にとって取るに足らない事ではないのかとさえ思える。

中国の第一四半期廃棄物原料の輸入量は前年度対比で57%減少し、内固形廃棄物は67%減となっている。古紙の輸入量は1-3月で393万トン、前年度同期比で-49.5%減となった。

 市中回収が未発達な中国

中国の製紙会社は1tの紙を抄紙するのに1.17tの古紙が必要と言われ歩留まりは85%となる。現在の中国の原紙は50%が製品の包材として再輸出される為、実際の古紙回収率は42.5%(85×50%)となり必然的に国内の回収率は50%を超えない状況だった。また市中回収及び分別が未発達である為、産業古紙が35~40%、10%程度のスーパー等から出る小売古紙が主な回収古紙だという。

この数年「独身の日」等のECビジネスの普及により急激に内需が伸び始め、それに伴い中国国内での紙製品の消費も増加し始めた。

必然的に古紙の発生量も増えるわけだが、この発生するごみの回収と処理問題も中国国内では大きな問題となっている。日本でも40年前に同じ問題に直面し「廃棄物に関する処理及び清掃に関する法律」等を1970年に制定、その他一般廃棄物、産業廃棄物等の法整備を行い、ごみの分別教育にも取り組み今では分別及びリサイクル率はかなりの高い水準となっている。

中国でも2000年以降小学校から「環境教育」を導入、都市部を中心に廃棄物処理場も増設したが、エネルギー資源としての教育が主軸で分別の教育はまだまだといった現状がある。

 早急の解決が必要なごみ問題

近年中国都市部のごみの発生量は毎年10%程増加をしており、現在は年間1.6憶トンものごみが発生しごみ処理場の処理能力を大きく超過している。焼却場の建設も地元住民の反対等もあり難航している為、ごみの分別回収によるごみ総量の圧縮が大きな課題となっている。

因みに日本人のごみの発生量は1人あたり320kg/年、総量で年間3.8~4.0憶トン(リサイクルしているごみの量は除く。古紙は215kg/年と言われている)。中国の人口13.6憶人が同量のごみ発生をするようになった場合、想像を絶するごみ問題が発生することは容易に予想がつき、中国では未曽有の問題として取り上げられている。

環境保護を目的として古紙を初め再生資源の輸入を規制した一面と、増加する国内消費、ごみの発生問題に対応した分別回収とごみの資源化は一貫性があり今後急速に進んでいくと思われる。

中国国内の古紙輸入量・前年度比 中国の古紙輸入量は前年度比-49.5%日本品の中国向けも-50.0%減となっている。日本からの輸出総量は前年度比-27.7%(1-4月)で第二国向け輸出へシフトしている様子が伺える。


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