■ 日本国内の古紙需給バランス
2018年11月28日
今年上半期は中国の輸入ライセンス規制から世界の古紙が余剰し日本からの輸出量は例年割れ、相次ぐ国内製紙メーカーによる荷止めもあり行き場のない古紙の販売に苦戦した。しかし西日本の水害、台風被害、北海道の地震等古紙の回収量が減少する事由が重なり、夏ごろから米国古紙の輸入規制に伴う日本古紙輸出価格の回復で輸出増、急激に古紙在庫がショートし国内外共に日本の古紙は引く手数多、価格も高騰している。
今年の日本の特殊事情がなくとも先進国では人口減少とスマートフォンの普及による印刷物の減少により古紙の発生及び紙の需要は減っている。 紙の需要減少は例外なく避けようのない事実で、板紙業界では今年7月に北上製紙の倒産閉鎖、5月に日本製紙が2019年3月から国内3製造拠点の用紙製造を順次撤退縮小すると発表したことは記憶に新しい。
一方公表されている日本の古紙回収率は80~81%前後で推移しており、災害の多発した今年さえも82%程になる見込みだ。古紙の回収率は維持されており、さらに紙の需要が減っているのになぜ古紙が必要なのか。世界中の古紙が余剰している中で日本の古紙だけが高止まり、通販需要が伸びた板紙関連は兎も角、新聞や印刷物は発行部数が減れば当然回収は減るが依然国内の古紙需要は大きい。
古紙の輸出量は下半期回復したが上半期前年同月比(1-9月)96%前後と減少しており通年でも若干減る可能性が高い。 頭の中では災害により発生が少ない上に中国への輸出が回復すれば、国内での需要期でもある秋には当然古紙がショートするのは理解しているのだが、結果輸出量は前年度と大差なく、紙そのものの需要が減る中、国内の製紙メーカーさえも輸出価格以上の価格を付けなければ全くものが無いのは何故なのか。
公表されている率だけを追うとまったく訳が分からなくなってしまう。国内の紙の消費・生産・輸出と輸入、古紙の回収と輸出数量、世界の紙・古紙需要が複雑にかみ合っている為、率と量の側面から細かく読み解いていくことにした。
パルプとの使用率を換算した古紙利用率はここ数年63-64%を行き来し、さらなる脱パルプ化、再生紙化は進んでおらず安定した比率だと言える。
一方で古紙の使用率(回収量/使用量)は増加しており、古紙の回収量が減る一方で国内の使用量は減っていない事を示している。 これは紙・板紙の生産量の内、減少したのはパルプを多く使う印刷用紙が主で古紙を主原料とする板紙関係は通販等の普及から減っていないことが理由だ。
古紙の回収率は2015年に81.3%、今年は82.0%になる見込みだが、回収量そのものは2,140万tから2,104万t(2017年)と3年間で約35万t/年も減少しており、紙の消費自体が縮小したことにより回収率が維持されていることがわかる。
【古紙の回収率は(国内古紙使用量-古紙輸入量+古紙輸出量+古紙パルプ生産量)÷(紙生産量+輸入量-輸出量)によって算出される】
一方古紙の輸出量はピークである12年を境に減少し、492万tあった輸出量は17年には373万tまで減少した。 2018年の予測は単純に9月までの平均輸出量を12等掛けすると昨年を上回る計算になるが、それでも374.6万t、2015年対比100万t以上減少している。
分かりやすく今年と昨年を比べると古紙の回収量は約2.1%、45万t/年の減少(1-6月時点前年同期比34万t 減)、輸出量は1.2万t/年微増、輸入量は約0.4万t減、国内の古紙使用量は7.5万t減少となる見込みだ。国内の古紙総量は昨年より46.6万tほど供給量が減った計算となる。