■ 段原紙輸出増の背景と将来予測⑥
2020年5月18日
中国では環境規制による古紙不足に新型肺炎による都市封鎖の影響が重なり古紙不足が加速、段原紙の供給不安を招いた。また東南アジアに於いて製紙会社の立ち上げや中国振り替え需要が発生しアジア全体で段ボール原紙が不足したことにより日本の段原紙輸出量は過去最高の月間7万㌧を超えている。
この戦時特需の様に生まれた段原紙需要は今後も続くのか。5月以降のアジア市場は異様な状況となっている。
古紙の輸出国である欧米諸国が都市封鎖を実施した為に古紙回収が滞り世界的な古紙不足が発生、OCC価格は200㌦を超える水準に達した。巣ごもり需要で食品や日用品等の内需消費は堅調であるものの、世界の貿易が停滞、工業品を中心に包装需要が急激に縮小した。
特に先進国への対外輸出比率の大きい中国や東南アジア諸国に於いて原紙需要の減退は著しく、古紙原料高に際しても製品価格は下落傾向にある。中国の振替需要に沸いたベトナム・台湾に於いても5月より荷動きが鈍化し価格が弱含んだ。
先進国では感染者数が減少傾向にあり、経済的損失が大きいことから、経済活動を再開する動きがみられる。
しかし南米などの途上国での感染が広まっており、都市封鎖が解除された後も海外への渡航や入国、貿易は制限が続くだろう。現時点で20年の世界経済は3%縮小すると予測されており、混乱が長引けば長引くほど経済損失は拡大していく。 通常製品需要が後退する不景気時には古紙価格も連動し下落するが、回収が滞った絶対的供給不足の中で、原料価格を下げることができない製紙側の苦肉の策が見受けられる。
しかし5月以降のアジア圏中芯販売価格は300~330㌦前後まで下落しており、価格が転嫁できなければこの古紙価格で購入し続けることは不可能となる。4月初旬、いち早く肺炎からの回復を宣言し都市封鎖を解除、稼働を開始した中国に於いても古紙・原紙価格共に急落した。
医療品以外の輸出が停滞した中国に於いて段原紙需要は非常に弱く、在庫調整の為5月初旬の労働節に大型休転を実施している。連休明けは古紙原料高から再度値上げを発表したが、この価格交渉の如何により今後の古紙を含めた価格動向が決定するものと思われる。