■ 段原紙輸出増の背景と将来予測⑤
2020年5月18日
中国での原紙不足は日本だけではなく世界の製紙企業が狙っている。東南アジアも中国同様経済規模は成長しており、世界の人口の60%が集中するアジア・オセアニアエリアに於いて今後も包装需要が拡大することは間違いない事実だ。中国製紙メーカーも東南アジアへの製造拠点の移設を発表、2025年までに2500~3000万㌧近い段原紙増産計画が発表されている。
古紙市場はいち早くグローバル化したが、段原紙もやがてグローバル化し近い将多国間の製紙会社通しが競争しあうマーケットになるだろう。新型肺炎の影響もあり今年2月、3月は7万㌧/月以上の段ボール原紙が輸出され、総生産量の1割近くに達した。しかし日本と同じ島国である台湾では2019年、260万㌧の生産量の内83万㌧が輸出され実に3割以上が輸出されている。
今後、中国を始めアジア全域に於いて需要も拡大するが供給も同じく増強されるため、価格や品質を含め適切なマーケティングと競争力が要求される様になるだろう。
国内製紙メーカーの輸出の拡大と継続に於いての課題と問題点は幾つかある。
- 製品規格の違い
日本の段原紙規格はJISに規定され、坪量や破裂強度、巻き直径や紙管の仕様まで世界のそれとは異なり独特な規格となっている。自動車も左ハンドルでは売れない様に、紙も海外仕様を開発しなければ適正価格での販売は難しい。
- 適切な価格設定
日本のメーカーは商社に販売を依存しており、リアルタイムなマーケットプライスを把握しづらい。変動の激しい海外市場ではリアルタイムに市場価格を把握し世界相場に合わせた価格設定が必要となる。
- 高すぎる国内物流コスト
他国に比べ非常に高い内陸運賃や物流コストが貿易に大きな障害となっている。少子高齢化によるドライバー不足、働き方改革による労働(運転)時間の短縮はより一層の国際競争力を弱めた。近い将来自動運転による物流コストの圧縮や港湾の24時間化(アジアの主要港で港湾が16:30に閉まってしまうのは日本だけ)が国を挙げての課題となる。
- 高い原材料費
固定化された日本の国内古紙建値では現在の国際市場では競争力がない。輸出市況に合わせた価格変動が必要となる。
- 古紙繊維長
上記国内物流コストとも関係するが、日本の古紙は繊維長が短く米国古紙も輸入するにはコストが高すぎる。また原質設備も輸入古紙に対応しておらず、アジアで主流となるA grade以上のライナーを製造するには原料面で不利。
- 工場生産コスト
日本の生産コストは22円~25円/kg(古紙価格抜き)。対してアジアメーカーは150-200ドル。やはり土地代、原燃料費、人件費、それぞれのコストが最終コスト差に結びつく。最終的に設備投資によるリノベによるコスト圧縮が不可欠。アジアでは6m規模の大型最新マシンで大量生産され、今後ヨーロッパで新聞マシン等の改造による転抄は10m級のモンスターマシンが稼働を開始する。
- 地元メーカーによる妨害
輸入紙に対して現地製紙メーカーは当然懸念を示している。現在のアジア原紙相場は日本の国内価格より安いため、現地市況に合わせて輸出することは、製紙メーカーがアンチダンピング(不当廉売)を政府に訴える可能性を否定できない。過去クラフトやコート紙に於いても中国政府によって日本製品に不当廉売関税が課された。
日本の段原紙規格はJISに規定され、坪量や破裂強度、巻き直径や紙管の仕様まで世界のそれとは異なり独特な規格となっている。自動車も左ハンドルでは売れない様に、紙も海外仕様を開発しなければ適正価格での販売は難しい。
輸入紙に対して現地製紙メーカーは当然懸念を示している。現在のアジア原紙相場は日本の国内価格より安いため、現地市況に合わせて輸出することは、製紙メーカーがアンチダンピング(不当廉売)を政府に訴える可能性を否定できない。過去クラフトやコート紙に於いても中国政府によって日本製品に不当廉売関税が課された。
以上の問題点を各個解決し国際競争力をつける事が今後の課題となるだろう。また現在の輸出量は新型肺炎による特殊事情に裏支えされた一面もあり、輸出の継続には今後新型肺炎による経済や市況への影響を無視できない。