■ 段原紙輸出増の背景と将来予測④
2020年5月18日
変動する市況と製紙メーカーの輸出戦略
17年の環境規制後中国は古紙不足と内需の拡大もあり原紙輸入を増加、価格も上昇した。日本からの段原紙輸出量も前年度比144%の56万t/年と増加し、内中国向けは全体の約2割を占めた。
19年は国内払い出しが冷夏や台風被害、消費税増税により前年度割れしたが、中国を始め東南アジアでは米中貿易戦争の影響で原紙需要が減退、古紙原料価格も余剰問題で低迷したことから、原紙価格も大きく崩れ採算悪化の為輸出量も対前年度比84.5%と減少した。
今年に入ると再び市況が逆転、さらに古紙輸入ライセンスが縮小された事、中国の新型肺炎により古紙不足が加速、原紙需要が強くなった事により日本からの輸出も拡大し1~3月は平均6万㌧以上、前年度同月比167%、中国向けは3か月合計で5万㌧を超え前年度比8倍となっている。
製紙各社が輸出を増加させる中で市況の変化や国内と異なる顧客への販売にノウハウと方向性を模索し確立しつつある。王子マテリアは海外での市況価格対応の為、原料である古紙も輸出対応価格で調達し輸出を継続する事で国内出荷が鈍化する中、古紙利用を維持した。
一方大王製紙は米国古紙を使用し、高強度ライナーを開発。色目やディテールなどアジア規格に合わせることで競争力を持たせ、かつ高付加価値製品の販売に舵を切った。生産坪量も現地大手企業と競合しない厚物に主軸を置く。日本製紙もKPを使用し同様の高強度原紙を開発中だ。対極的な方針ではあるが、いずれも輸出の採算性と継続性に主眼を置いた戦略を模索している。