段原紙輸出増の背景と将来予測③

  ■ 段原紙輸出増の背景と将来予測③

2020年5月18日

 企業の継続的成長と国内市場価格安定の為、輸出を強化

‘19年の日本の段ボール(箱)の消費量は105億㎡(前年度比100.2%)、冷夏や台風による影響で前年程の伸びはなかったものの、過去数年1~2%程度の成長をしている。目下段ボール企業数は年々M&Aや廃業により減少傾向にはあるが、大手一貫への寡占化も技術革新も進み一工場あたりの生産平米数は向上した。

大手原紙メーカーは多数の転抄・増産計画を発表、19年から21年までの3年間で52万tもの段ボール原紙が増産される。

電子化の影響など消費が減少する印刷用紙業界と異なり微増を続ける段ボール原紙部門は世界的に今後も成長の期待できる分野だ。

大王製紙を始め増産を発表する大手製紙会社は増産する段原紙の大半を海外、輸出向けに販売するとしている。国内の段ボール消費は微増をしているものの消費の牽引役である通信販売も頭打ち、人口減少から将来的に大きな成長は期待できない。

いたずらに国内販売を増強すれば価格下落の要因となりうる事から、成長を続ける東南アジアを含め海外のニーズを掴むことは継続的な企業成長には不可欠な戦略だ。 また中国の経済成長は包装需要の急激な成長を促し、古紙原料を含め段原紙価格も高騰させた。日本市場に於いても原料高から製品価格が改定されたが、増産発表当時の中国・アジアの原紙価格は円安も相まって日本の段原紙メーカーにとって十分に採算のあう価格だった。

段ボール産業は地場産業であり、日本の段ボール原紙は原料調達から製品の販売までほぼ国内で完結している。故に日本の製紙企業は内需を優先、少ない限られた顧客を安定的に繋ぎ留めたいという姿勢は価格競争を招き長らく低収益に悩まされた。また低収益から設備投資ができず輸出する生産余力もなかった。

17年以降中国の経済発展に伴う古紙原料と原紙価格の上昇は、輸出拡大への大きな足掛かりとなっている。冒頭で述べた通り中国政府は21年に古紙の輸入をゼロにする目標を掲げている。近い将来高い原紙輸入需要が生まれる事は当時から予想されており、価格改定により資金に余裕ができた製紙企業は、古い新聞マシン等を将来性の見込める段ボールへ転抄するなど輸出向けに設備投資をする事ができたのだ。

アジアでの価格上昇が起きる以前より段ボール部門に於いていち早く海外戦略へ足を踏み出したのは王子、レンゴーだ。2010年以降円安とチャイナプラスワンの動きから多くの日系企業が東南アジアへ進出した。

王子HDはそういった日系エンドユーザーへの段ボール供給を主軸に段ボール工場を展開、製紙部門では2010年マレーシアでGSPP社を買収している。アジア各国の段ボール工場に於ける原紙使用を内製化、日本からも原紙を供給し輸出を継続してきた。

レンゴー社は原紙輸出にこそ力は入れていないが、ベトナムSCG社への出資をはじめ海外でのM&Aを主軸に海外事業を展開している。

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