■ 段原紙輸出増の背景と将来予測②
2020年5月15日
古紙原料不足に起因する原紙不足から製紙メーカーがAOCCを主原料とし、より付加価値の高い高強度段ボール原紙の製造を強化した。中国ではもとより強化芯の普及が遅れ破裂強度ベースのダブルまたはトリプル段ボールの使用率が高い。
シングル化は原紙不足解消と平米坪量減少によるコストメリットの両側面から一度市場に受け入れられれば浸透は早い。GDP成長率は鈍化したとは言え6.2%のプラス成長、段原紙、再生パルプ輸入増の中で段ボール原紙の消費量が8%も減少した背景には米中戦争による消費減退以外に市場のシングル化が影響していると推測する。
19年の中国GDP成長率は6.0%とさらに鈍化し輸入は前年比-2.8%、輸出も0.5%増にとどまった。米国向けの輸出は前年比13%減、輸入は同21%減といずれも大幅に減っている。
さらに20年に入り新型肺炎の影響は甚大で中国を始め世界の貿易量は大幅に減退した上に、米中両国の関係は悪化している。GDPには政府による公共投資額も含まれ、6.0%の成長率のうち民間部門がどの程度を占めるか不透明ではあるが、シングル化し減少した消費を鑑みても20年の段原紙消費量が17年以上に回復する可能性は低い。
以上の事から中国の短期的(1~2年)の段原紙消費量が18年~19年程度にとどまったと仮定して予想してみる。段原紙消費量は4,700万t、世界の再生パルプ生産能力は今後の増強分も含めて400~500万tになると言われている。
段古紙の回収量は消費減から大きく増加しないと仮定するとおよそ3,500万t前後になるのではないだろうか。消費量が増加しなかった場合でも単純計算で21年以降1,000万t以上の段ボール原紙が不足し輸入に頼らざるを得ない状況が見えてくる。
さらに中国国内の板紙需要は中長期的にみれば経済成長に伴いまだまだ増加すると見られ、今後5年間でも数百万tの需要増が予測される。
(GDPは年率5-6%成長、人口も2030年までは1.18%/年ずつ増加することから段原紙需要も年率数%の増加が見込まれる)以上のことから段原紙の需要は米中貿易戦争や肺炎の影響によって変動はあるものの、2-5年ほどのスパンでみると増加していくだろう。
中国政府は環境規制発表後、資源ごみの回収インフラに投資し今後古紙の回収量も向上することが予想される。
しかし中国の経済は内需が成長したと言えど貿易依存度は高く、中国で製造された多くの製品が輸出され先進国にて開封される。 国内古紙回収では中国の古紙不足は解消できず、段原紙輸入は増やさざるを得ない。