■ 段原紙輸出増の背景と将来予測①
2020年5月15日
日本の段ボール原紙輸出量が急増している。3月の通関統計では段ボール原紙の輸出量は単月で7万6千㌧を超え、前年度比1.8倍の数量となった。
主に中国向け輸出量が増加しており前年度比8倍の2万3千トンで輸出量全体の3割を占める。古紙輸入制限に新型肺炎の影響で国内古紙回収が滞り予想を上回る古紙不足が発生、海外への原紙発注が加速し1~3月は145.8万tと前年度比3倍もの段ボール原紙を輸入した。
また中国だけではなくマレーシア、台湾、インドネシア向けも好調だ。米中貿易戦争によって発生した中国の代替え需要に新型肺炎による中国の生産活動の停止が重なり内需が堅調となったからだ。
日本では4月に大王製紙N7マシンの稼働、北越製紙の段ボール事業参入や、苫小牧王子製紙の転抄を控え各社需給調整と東南アジアでの需要増加を取り組むべく輸出戦略を発表しており、そういった日本側の戦略と新型肺炎による物資不足が輸出を後押しした形だ。
中国は’17年より古紙の輸入ライセンスを制限し、21年までに極力古紙の輸入をゼロにする目標を掲げている。ライセンスの制限により古紙の国際市場は乱高下したが、2500万t以上あった古紙の輸入量も1000万t/年と縮小し価格が低迷した。20年に発行されるライセンスは600万t前後になると予想されており、中国製紙メーカーは他国にその生産拠点の移転と、再生パルプ設備を増強した。
下記の中国輸入通関統計からもわかる通り、縮小する古紙の輸入量に反比例し段原紙と再生パルプの輸入量は増加している。
‘19年はOCCの輸入量が対前年度比500万t弱減少した半面、再生パルプは60万t、段原紙は58万t増加している。中国造紙協会の統計によると‘17年の中国段原紙消費量は約4,900万t。18年は4,550万tと前年度比8%程縮小、19年は4,777万tまで回復している。
古紙輸入量減を段原紙と再生パルプの輸入が補うように増加する中で、一時的に18年古紙段原紙消費量が前年比350万tも減少した背景には米中貿易戦争による景気減退とシングル化による段ボールの軽量化があるのではないだろうか。