■ 21年7月アジア古紙市況
2021年7月28日
インドネシアは原紙販売の不調から今回の古紙価格上昇に抵抗感を示したが、ここにきて重い腰を上げるように価格を修正した。しかし積極的に買っていこうという動きは無いように感じる。インドネシアでも新型は肺炎の流行が拡大し国内消費が影響を受けている上に、古紙輸入規制によるコストアップによって、原紙の価格競争力がなくなった事でマレーシアやベトナムにシェアを取られつつある様だ。
そういった産業への影響を鑑みて7月16日インドネシア政府は古紙に含まれる不純物の許容量を最大2%まで認める事を決定した。新規制は9月から施行される。 同政府は2019年の規制開始当最大2%のコンタミを許容していたがその後2年以内に0.5%まで規制を強化する方針を示していた。
スクラップリサイクル産業研究所(ISRI)は近年の検査体制の確立により品質維持は十分達成されているとし、製紙産業の競争力低下を防ぐために今回の決定に至ったとしている。新しい規制では廃棄物原料は原産国からの直接出荷のみ認められ、第三国を経由したものは不可となる。検査証明書には輸出者が記載され、輸出者の自国古紙を自国の検査機関を通じて発行されたものに限定される。 一方で、今後輸出者は古紙業者に限定し、ブローカーなどの輸出関与を規制する事も検討する模様。
マレーシアは6月1日からロックダウンを実施し7月もなお状況は改善していない。日に7000名もの新規感染者が確認されており、都市部の外出禁止令を含め厳戒態勢が敷かれている。
製紙及び段ボール工場は通常通り稼働する事ができているものの、従業員60%の出社に制限されており政府が必要不可欠とみなした量のみ生産する事が許可されている。さらに古紙の回収が減少している上に港の荷扱いが鈍化しているため古紙が不足し始めている。
ベトナムは新型肺炎の感染抑制に成功していたが4月以降感染が急拡大、7月19日には1日当たりの感染者数が5400人を超え、80名が死亡した。累計感染者数は65,000人、死者は334人となっており感染が急拡大している。感染者の大半がホーチミンに集中しており、同市では住民が日用品の買占めに商店へ殺到するなど、混乱が起きている。ベトナム保健省は7日、ホーチミンに於いて9日から15日間の厳しい行動制限を決定した。 行動制限期間中は外出や2人以上の集まりを禁止し、公共交通機関が運行を取りやめる。
製紙・段ボール工場の稼働は可能だが、市外にでてしまうと一週間の隔離措置とPCR検査が義務づけられており、市外に住む従業員は帰宅すると隔離措置の為出社できなくなってしまう。 生活維持のため工場に寝泊りせざるを得ない従業もいるため、事務所や社員食堂にテントを設営し稼働を維持している工場もある。しかしシャワーの問題や寝袋での就寝など、劣悪な環境下に長期化する事への懸念も出ている。
インドでは経済成長と2017年のGSTの導入により急速に国内の段ボール需要が拡大したことで、今年は少なくとも11もの製紙ラインが立ち上がる。2020年の古紙輸入量は約600万㌧に達し、昨年の中国とほぼ同量の輸入量にまで市場が拡大した。
しかし再生パルプや中国向け原紙輸出が増え国内流通は慢性的な段ボール不足に陥っている。 段ボール製函企業は、原紙不足と価格の上昇に加え、新型肺炎やインフレの影響で人件費やスターチ、薬品などのコストも60~70%上昇しているため採算が悪化、20%近くが倒産の危機に直面しているという。 高騰した原料価格を即座に全額BOX価格に添加する事は難しく、3月にインド全土に於いて段ボール企業のストライキも多発した。
さらに21年の段原紙及び再生パルプの輸出量はインドの生産量の30%近くに及ぶ200万㌧規模になるとの予測もあり、南インド段ボール箱製造業者協会(SICBMA)は政府に段原紙の輸出禁止を要求している。
2020年にインド製紙協会(IPMA)は商務省に対し、輸入紙の関税を現在の10%から25%に引き上げるように書簡を郵送し、二級品の輸入を禁止するなど国内製紙の発展と保護政策を取ってきた。その一方で製紙企業が価格を重視し輸出を増加させ、加工業が打撃を受けている事は本末転倒で今後のインド政府の対応が気になる所だ。