■ アジア古紙市況 欧米古紙価格は底打ち一部反発 しかし年明け需要は厳しく
2022年10月23日
現在の東南アジア向けEOCC価格は105~130㌦、AOCCは120~140㌦前後まで下落し、3ヶ月で半値以下となった。 10月中旬以降はインフレによる消費減退で古紙発生量が減少した事もあり、短期的にはやや底を打った感も出ている。 一方日本のOCC輸出価格は古紙発生量が少ない事や、輸出原紙生産の為、国内消費量が増加し需給がタイトな状況で、欧米古紙に比べ軟化スピードは緩やかだ。 日本からの段原紙輸出量は1~8月で71.4万㌧と昨対比4%増加、一方でOCCの輸出量は75万㌧と3割強減少し、3月以降の段原紙輸出量はOCC輸出量を超える月が出てきている。段古紙が段原紙へ姿を変え輸出されている状況だ。 中国向け段原紙輸出もアジア各国が同国向けの輸出量を減らす中で、昨対比4割以上増加し6月の輸入シェアは9.5%を超えた。これはロシア、マレーシア、台湾に次いで4番目に多い国となり、円安が後押しし日本が中国のシェアをとった形となった。
現在のJOCCドル価相場はCIF VIETNAM $155~165、CIF TAIWAN $130-135前後でのオファーとなっているが、台湾はAOCCが120~130㌦レンジで買える事から割高なJOCCを積極的には買っていない。一方でベトナムでは10月~11月船着を条件に、一部JOCC買う動きがあった。ベトナムの製紙企業は古紙が急激に下落を始めた7~8月にかけてキャンセルを連発し、あまり古紙の買い付けをしていなかった為、9~10月のEOCC船着が少なく、8月の英国港湾ストの影響も重なり古紙在庫が一時的にショートした事が背景にある様だ。また、6月にインドが大量にキャンセルしたEOCCはマレーシアの中華系企業が再生パルプの原料として安価に引き受けており、瞬間的にマレーシアがベトナムよりEOCCを多く購入する局面があった。 古紙在庫が少なく、船足の短い日本の古紙に対しやむを得ず引き合いを出すメーカーもあった事で成約価格はCIF 155~165㌦前後とばらついた。円貨ベースは為替相場が1㌦150円を超え、海上運賃もほぼコロナ前の水準まで下がった事で、CY19.5~20.0円/kg前後となっている。
今後のアジア古紙相場は、23年の旧正月及びテトは1月中旬~末になるため、日本古紙で12月末~1月初旬、欧米古紙は11月末ごろが船積み期限となる。例年旧正月前後を不需要期となり荷動きが鈍るが、来年は特に需要の落ち込みは厳しくなると見られ、現時点で既に年明けの古紙荷受制限を検討する製紙企業も出てきている。また年明けにライセンス更新を控える中小製紙企業もあるため、1月~2月頃の欧米古紙価格は不透明な状況だ。 相場がさらに下落すれば、割高となった日本古紙は船足の短さ以外に優位性が無く、年末の駆け込み需要はともかく年明けは優先順位が低くなる事が予想される。 急いで買う必要が無くなれば再び「下がり待ち」状態となる可能性が高い。年明けの輸出価格は、アジアの段原紙価格が軟化する中で国内メーカーが輸出原紙の生産を維持し需給がタイトな状況が続くか、古紙輸出商社が年明け船着分の契約を確保する為にアジアへ幾らでオファーするか次第となるだろう。