■ インド段ボール企業採算悪化 政府に原紙輸出制限の嘆願書を提出
8月に入り、輸出古紙価格が若干軟化した。7月末に段ボール古紙輸出価格が一時CY29円と異常な高値も出ていると噂になったが、当時そこまでの高値を付ける製紙企業はなく、投機的に動いたブローカーによるスポット価格だったと思われる。実際の販売価格も、CIF TAIWAN $290~295 CIF VIETNAM $305-315(CY27.5~28.5/kg)付近に留まっていた。
8月初旬以降、製紙企業が夏休みに入った欧州からの東南アジア向け古紙オファーが増えた事で、高すぎる日本古紙の購入を控える動きがあった。 また価格をけん引していた台湾製紙企業の購買意欲が弱まった事で価格が軟化した。 アジア各国に於いても新型肺炎の感染拡大は深刻化しており、都市封鎖や物流や企業活動が制限される事によって原紙需要が悪化しつつある。
しかしアジア全体の古紙不足感は変わらず、円貨ベースの輸出古紙価格は高値を維持していることから、秋需を前に今後の市況動向は不透明な状況となっている。現在の古紙輸出相場はCIF TAIWAN $275-280 CIF VIETNAM $300-313となっており、先月の最高値より10㌦ほど軟化した形だ。
ベトナムでは新型肺炎の感染拡大に歯止めがかからず、ホーチミンでは23日以降より厳格な都市封鎖が実施されている。当初は7月から実施している日中の生活必需品や医薬品を購入する場合を除く通行を禁止と夜間の外出禁止令を9月15日まで延長する予定だったが、より厳格な都市封鎖を実施する事が閣議決定された。これにより日中も市民の外出は禁止され、生活必需品は軍を動員し配給する事となった。工場の稼働は工場内での宿泊設備を確保すれば可能だが、稼働率は大きく低下している。段ボール企業を含む製造業全般の稼働と、サプライチェーンが寸断した事により物流が停滞しており、段原紙の流通も滞っている。 取引先段ボールメーカーの話では、製紙工場は稼働しているが、段ボール工場の稼働率は30%程度となっており、まともに経済が動いている状況ではないという。
マレーシアでは成人人口の50%(約1,100万人)がワクチン接種2回を完了しているものの感染拡大が終息しておらず、新規感染者数は2万人/日、死者は日に200~300名ほどでている。6月以降都市封鎖は継続されているが、工場の稼働はワクチンの接種率に応じて決定され、出勤する全従業員への2週間に1回の抗原検査が義務づけられている。しかし、物流上の制限や感染対策に人員を割かれる理由から工場の稼働率は決して高くない。包装材である段原紙の需要も弱い。 そんな中ムヒディン首相が16日辞意を表明し、政権が交代するという事態となった。非常事態宣言下で国会の審議を得ずに勅令を乱発し国会軽視との批判がでており、厳しい措置を取る一方で感染拡大は収まらず就任後約1年半で退陣に追い込まれた形だ。次期首相はイスマイルサブリ・ヤーコブ前副首相に任命され、主要な政策は前政権を継承する見通しとなっている。 マレーシアでは古紙を含む廃棄物原料の輸入に関し、輸出地での船積前検査制度を導入すべく法整備を進めている。 詳細な制度「案」については以前のレポート(3月25日市況レポート参照)でも記載したが、近くこの制度を導入するとの噂が出ており、今後実務上でどのような問題が発生するかは未知数だ。
タイに於いても感染拡大は深刻化しており、8月17日には1日の新規感染者数が2万人に達した。7月以降都市封鎖を実施しているが、感染拡大が終息せず経済成長率は+1.8%から+0.7%に下方修正されている。また、経済の先行き不安から1USD/33THBと去年4月以来のバーツ安となっており、この1か月余りでドルに対し約5%値下がりした。バーツ安は企業の資材調達にも大きく影響している。タイには山鷹社を始め中華系製紙企業の再生パルプ工場が70万㌧以上稼働しており、特に米国古紙の調達を優先している。
栄成紙業の段原紙マシン稼働や、米国古紙が中華系製紙企業に押さえられてしまった事で古紙不足となっていた台湾に於いても古紙の購買意欲が弱まった。 背景には台湾でも新型肺炎によって港湾の荷役作業に影響がでている事と、6-7月に大量に到着した輸入古紙をスムーズに引き取ることができず延滞費用が発生している事がある。また台風や大雨の影響で農作物が不作となっている。 中国からの原紙引き合いも弱く、ベトナムを始めとする東南アジアも都市封鎖によって原紙需要が減退したことで、9月は原紙輸出量も減少するとの見込みから古紙の購入を一時見合わせる動きを見せている。