■ アジア古紙市況 インドの経済再開 古紙価格上昇
旧正月明けのアジア古紙価格は上昇トレンドで始まった。インド政府が経済再開に舵を切った事で国内需要が回復し段原紙と古紙需要が強まったことが要因となっている。インド製紙企業はAOCC#12に370㌦以上の高値を付け東南アジア全体の古紙価格に大きな影響を及ぼした。 東南アジアの古紙在庫は旧正月前に発注した古紙の船着が遅れ非常に少なく、旧正月明けの荷量増加によってBookingも取りづらい。さらに船会社はコンテナの量に応じて追加料金を課しており、量を増やせば増やすほどコストが上昇するため供給量が限られ、インドとの古紙獲得競争が生じている。 インドでは近年、経済成長に伴いローカル企業を中心に段原紙の増産が相次いだ。過去3年間で350万㌧以上生産能力が増加している。 しかし国内の古紙回収インフラは整っておらず古紙回収率は40%を下回る。ウェストピッカーと呼ばれるごみの中から資源物を選別し生計を立てる人たちが200万人以上存在し、インドの国内古紙回収はこういった人々に支えられている。段原紙の増産と回収インフラの脆弱さは慢性的な古紙不足を招く結果となった。
一方先行して上昇した日本古紙への引き合いはあまり強くなく、欧米古紙に比べ緩やかな上昇となっている。 日本古紙の輸出価格は旧正月明けの先高観を見越した買いが先行し、1月中旬以降大きく上昇していた。 JOCCの上昇幅は国によってばらつきがあり、CIF VIETNAM $280-295 (CY26.5-27.5/kg) CIF TAIWAN $260-265(CY 26.0-26.5/kg)とベトナム向けが若干強めに上昇している。 旧正月明けの海上運賃は原油価格の高騰と、閑散期スポットレートが無くなり100~200㌦ほど値上がりしたが、為替が113.0円から115.5円付近まで円安に進んだ事で円貨がキロ単価0.5~0.6円程度押し上げられ相殺された。 円貨ベースでは昨年6~7月の(当時110円/USD)高値と同程度となっており、ドル価は当時より10~20㌦程度安いものの円安効果が古紙価格上昇に寄与した形となった。
東南アジア各国が古紙の購入価格を引き上げる中で、台湾は日本の古紙に積極的に高値をつけて買う様子はなくドル価は大きく変わっていない。 昨年日本からの古紙輸出量の25%を台湾向けが占め、台湾の古紙輸入も米国古紙と日本の古紙が92%を占めるほどに日米への古紙依存度は上がっている。 それでも台湾企業が日本の古紙に積極的に価格を付けない背景には、AOCCが275㌦前後と立地柄比較的安価に調達できることや、中国向け段原紙輸出が不調である事が影響している様だ。 北米からの海上運賃はマレーやタイと比べ㌧当たり30~40程安く、BOOKINGも取りやすい。また台湾からの段原紙輸出量は、昨年11月の9万5千㌧をピークに1月は5万5千㌧と4割以上減少し、特に中国向け輸出量が4万4千㌧減少している。 現在の日本古紙円貨ベースの値上がりは、ベトナム向け価格の上昇と円安による影響が大きい。
国によって古紙購入に価格差が生まれている背景には、東南アジア各国の古紙調達がその立地条件によって大きく影響を受け、購入できるエリアが限定されている事があげられる。インドやタイ、マレーシア、インドネシアなどマラッカ海峡周辺国は欧州からの古紙輸入比率を大きく増やしている一方、ベトナム、台湾、韓国など太平洋に接した国々は日本、米国の古紙輸入量が増加している。また、インド
向け米国古紙の輸出は東海岸よりスエズ運河を通じて運ばれる。港湾混雑が問題視される西海岸を経由しない事で比較的コンテナが取りやすい上に、東南アジアの様に未選別古紙の輸入規制をしていない事で安価なMIX古紙を購入できる状況にある。 21年のインド向けAOCC輸出量は192万㌧と前年比2倍、AMIX古紙は156万㌧と1.8倍になった。 海上輸送がボトルネックとなる昨今、各国の製紙企業は海上運賃やコン
テナ不足が足枷となり調達元が限定されることで、思うように古紙が調達できない国もあれば、台湾、韓国、インドの様に米国古紙を優位に購入できる国もある様だ。