注目キーワード
旧正月明け古紙価格強含み 中国向け原紙価格が上蓋

2022年4月 東南アジア古紙市況

米国内製紙企業在庫増加 アジア需要も弱く米国古紙価格軟化

  ■ 2022年4月 東南アジア古紙市況

先月末より軟化していたアジア古紙市況は、この4月中旬以降は価格が横ばいで推移している。一方、未曽有の円安により円価ベースの古紙輸出価格はやや上昇ぎみだ。3月中旬、価格軟化前のベトナム向けBitプライスはCIF $290~295㌦前後、為替は@115円であった事から、円貨ベースのCY価格は26.5~27.5円/kgだった。ドル価での成約価格が軟化し始めた4月初旬にCY価格は一時26.0~26.5円前後まで下落したが、円安が129円前後まで進んだことからドル価格の下落分を打ち消す形となった。現在のベトナム向け価格はCIF $270-275と10~20㌦前後下落したものの、円安によってCY価格は27.0-27.5円を維持している。また、国内プレミア価格も一部28円~30円近い価格がでており、国際ドル相場の下落をさほど感じさせない状況だ。

ドル価ベースの古紙価格下落要因は ①欧州古紙のインド向け輸出が再開された事 ②中国の景気減退と相次ぐ都市封鎖によって段原紙需要が非常に弱い事が要因となっている。 中国では複数の都市で厳格な都市封鎖が実施され、特に世界有数の金融・物流都市である上海が封鎖された事で近隣都市の物流は麻痺し、操業停止を余儀なくされている製造業も多い。 港湾作業も遅れ、上海港沿岸で荷役待ちの本船は300隻以上に達し2週間で5倍以上増加した。また上海港からのコンテナ平均搬出時間は4~6時間以上かかり、浦東地区、浦西地区でも出入りするトラックの数は30%以下に制限されている。4月14日以降は長距離輸送トラックのドライバーに中国全土で統一した通行証を携帯する事が義務図けられた。通行証はドライバーの健常な体温と48時間以内のPCR検査証明、健康コードなど条件に一致した場合に発給される。統一した通行証で長距離トラックの移動を管理し、さらなる感染拡大防 止を一層強化する狙いがあるとみられる。 

こうした厳格な都市封鎖によって包装需要は減退し、東南アジアからの段原紙輸入需要も大きく落ち込む事となった。 中国通関統計によると今年1~3月の段原紙輸入量は115.6万㌧で前年度比29%減少し、特に3月単月の輸入量は前年度比53.8%まで落ち込んだ。中国国内の製紙企業も各社大型休転を実施、需給の調整と段原紙の値上げ発表によって、値崩れを食い止める事に躍起だ。こうした中国の段原紙需要減退は東南アジア製紙企業の古紙購買意欲を弱める結果となった。

また、欧州からのインド向け古紙輸出が再開された事によってインド製紙企業の古紙購買価格が大幅に軟化した。 昨年10月に施行されたEUの廃棄物輸出に関する規制改定によって、OECD非加盟国に対する固形廃棄物原料の輸出が制限される事が決定していた。 この改定では古紙は原則対象外で粘着シート付古紙のみが輸出規制対象とされる予定であったが、インド大使館の答弁書類作成ミスにより全てのインド向け古紙輸出が停止されてしまった。 そこへ年が明けて感染拡大の終息と経済再開による需要増が重なり深刻な古紙不足が発生。 EUを離脱した英国あるいは米国古紙に高値をつけざるを得ない状況となっていた。 その高騰したインドの購買価格が、4月1日より欧州古紙輸出が再開された事で一旦落ち着きを取り戻しつつある。 一時300㌦後半をつけていたインド向けDSOCC価格も約30-40㌦下がり330-350㌦レンジへと軟化、UKOCCは40-50㌦下落し300㌦を割る水準まで下落した。 さらに中国向け段原紙需要の減退が重なり、東南アジア全体の古紙価格はダウントレンド入りした様な状況だ。

 目下東南アジア製紙企業の古紙在庫も潤沢にあることから、現在の古紙輸出契約は大方5月中旬~6月以降の船積みをターゲットとした成約がベースとなる。1、2ヶ月先の「先物」を契約するような状態となるため、値決めは将来の需給を見越して決定する必要がある。 例年1~4月は不需要期だが5月以降、夏場に向け需要が回復する。また6月に入ると梅雨の影響による古紙発生減で供給量も減るため、価格が一時的に強含む事が多い。そのころには中国の都市封鎖も解除されている可能性もあるだろう。一方でウクライナ戦争による海上運賃の値上がりや、世界的景気後退リスクもある。現在の超円安もこのまま継続するかは不透明だ。価格が底打つタイミングを見越しながら新規契約は慎重にならざるを得ない。

旧正月明け古紙価格強含み 中国向け原紙価格が上蓋
最新情報をチェックしよう!