■ 日本の古紙回収は維持されるも発生減、物資不足でスタグフレーションのリスクも
2020年4月
法的に完全な都市封鎖が実施できず、また古紙自給自足国である日本に於いては古紙不足という程の事態には陥っていない。
しかし需給に大きな変化が表れていることは事実だ。 段ボール古紙の輸出量は中国向けが減少したものの東南アジアでの需要が堅調、年始旧正月と中国環境規制から古紙が滞留するとの危機感から古紙問屋の吐き出し出荷が重なり1~2月は前年度比1.5倍ほど輸出された。
また日本からの原紙輸出が増えており、製紙の稼働は前年度比100%超え、国内の古紙利用も維持されている。 一方で巣ごもり需要によりスーパーや家庭から出る古紙は増加したが、工場などからの産業古紙や輸入品が減ったことにより全体の段ボール古紙発生は減少している。
感染防止のため集団回収を取りやめた地域もありエリアによっては前年度比1~1.5割程度減少しているという。さらにイベント自粛や娯楽施設の閉鎖等によりチラシの発行が縮小、雑誌古紙の発生も減ってきている。
昨年より輸出価格が低迷した影響で古紙問屋のヤード閉鎖、回収見合わせ、アパッチ等抜き取り業者の減少により古紙回収のシフトが発生し回収減の影響が表に見えづらい部分もあるが、業界全体の古紙回収量は減少するものと思われる。
段ボール古紙の輸出引き合いは海外に於ける古紙不足の影響から維持されているものの、世界経済は急激に悪化し包装需要そのものも減退することが確実視されている。
リーマンショック以上の世界不況が来ると言われている今回のコロナショック、価格が維持していると言え輸出先は限定されており、製品需要の減退と古紙供給可能量のバランスによって価格が一変する可能性がある。 一方で世界的な金融緩和による資金の流入と物資不足は強烈なスタグレーションを引き起こす可能性も秘めている。
製品需要は減退するものの、オイルショックの様な供給不足からくる原料及び製品価格値上がりの可能性も否定できない。 現時点で製品価格は需要減から弱含みだが、古紙価格はジリジリと値上がりし始めており、現在の輸出古紙相場はJOCC TAIWAN $150 (CY14.0~14.5/kg) CIF VIETNAM $165~170 (CY14.5~15.0/kg)となっている。
サプライチェーンが複雑化した現在、古紙・原紙の流通も同様で各国ごとに状況は異なり、内需だけでなく他国の需給に左右され日々市況が目まぐるしく変化するため予想が非常に難しい状況だ。