■ 米国古紙に5%の追加関税、日本品に引き合いくるも上値重く
2019年11月30日
昨年史上最高値をつけた11月が目前と迫った今も秋需は全く見られず、古紙・原紙ともに中国向けは非常に引き合いが弱い状態となっている。
古紙輸入ライセンスは10月17日に第4四半期の40万tが発行された。 44社と思いのほか多くの企業に交付された割に数量が少なく、年明けに立ち退きが確定している富陽地区の中小メーカーにも僅かばかりライセンスが交付されていたことは最後の餞的なニュアンスがあったのだろうか。
12月15日より米国古紙に対する関税が5%増税され30%となる為、ライセンス発行を見越して船足の長いAOCCを購入していた中国製紙メーカーが、予定より発行が遅れたことや当時想定されていた発行量(100万t)より少なくなるとの予測があったことから、あわててキャンセルする等のいざこざもあったという。
新規発行されたたライセンスは米国品の再調達に当てられていると見られ、発行直後AOCCの価格は反発し CIF $135-140㌦となった。 しかし12月の関税増税前に10月中の船積量を稼ぎたい米国サプライヤーによる売り圧力が勝り、AOCCの価格を再度押し下げ現在はAOCC #12 CIF $110-125で取引されている。
もし今後山東省のメーカーにもライセンスが交付され、キャンセルしたAOCCの穴埋めをすべく日本へ引き合いが来ればJOCCも若干価格を持ち直す可能性はある。 しかし先月の中部組合応札価格である中国向けJOCC CIF$90-95㌦が指標となり価格が下がった事により、東南アジアメーカーからもベトナム向け$90~$100レンジ、台湾向けCIF$80㌦の価格帯も出てきている為大きな期待はできない。
また2020年1月よりIMO(国際海事機関)のMARPOL条約に基づく低硫黄燃料規制が実施されることが決定しており、11月1日より船会社各社からLSS(Low Sulphur Surcharge)やISOCC(IMO SOx Compliance Charge)等の名目でサーチャージが課され海上運賃が値上がりする。
値上げ幅は運送距離、船会社によって異なるがおおよそ$40~140/コンテナ。 古紙のkg単価にすれば(0.2~0.7円/kg)程で古紙価格が低迷した現在の市況から鑑みればこの1円弱の負担は大きく、現在のJOCC相場であるCIF ベトナム$90-100は新海上運賃適用後(CY6.0-6.5円/kg)となる。
古紙問屋店頭価格は5円を割りこむ為6月につけた最安値をさらに下回る価格となりそうだ。 例年2月頃である旧正月が今年は1月25日となっており、台湾の製紙メーカーから1月16日から2月2日までの船着をしない様にアナウンスが来ているが、中国では同様あるいはさらに長い休転が予想される。
旧正月を祝う国は中国・台湾を初め、韓国、ベトナム、シンガポールと多く、タイでは旧正月に国として長い休暇ではないものの、華僑系企業を中心に企業単位で休暇をとるケースも珍しくない。
日本の税関がお休みとなる年末年始直後に中国、東南アジアの旧正月休暇が控えており、1月初旬の船積みは旧正月中の到着となるため実質1月の船積みは絶望的な状況だ。 さらに今年は米中貿易戦争の影響で原紙需要は悪い為、各メーカー12月中旬頃から古紙在庫を圧縮する動きを取るだろう。
上記の理由から今年は年末の輸出需要が非常に弱くなるとの予測、11月-12月分の船積みを今決めて欲しいとの古紙問屋からの引き合いが強い。 販売先を探しアジア各メーカーに問い合わせしているが、通常とは異なる先の出荷と弱含みする市場に各メーカーあまりいい顔はしない状況だ。
現状の相場より安ければとの回答に今無理やり押し込めば更なる価格下落を招いてしまうが、出遅れれば年末販売先の確保が難しくなるというジレンマに見舞われている。