■ 21年 中国の段原紙輸入量が減少に転じたワケ
2022年1月27日
21年から中国が古紙を完全輸入禁止にしたことで、原料不足から中国国内において段原紙不足が発生し、大きな輸入需要が生まれる事が期待されていた。事実20年の段原紙輸入量は717万㌧と19年の輸入量から2倍以上に増加した。中国造紙協会の統計によると、20年の中国段原紙消費量は5,613万㌧
で前年比17%以上増加した。中国の経済成長による内需の拡大と脱プラニーズ、新型肺炎の流行による宅配ビジネスの拡大が消費増加をけん引した形だ。21年の統計は未発表だが、「独身の日」通販セールに於いて大手2社の取引総額は約16兆円に達し、前年同期比18%増で過去最高額を更新している。また宅配便の郵送個数は1,085億個と前年同期比30%増加した。
一方で21年の中国段原紙輸入量は昨年6月以降前年度対比を割り込んでおり、通年でも615万㌧前後と減少に転じる見込みだ。 「インフレ抑制」や「共同富裕」など政策要因による景気減速と、オミクロン株の流行やコンテナ問題から物流に支障がでており、中国の景気鈍化が輸入量縮小の主な要因となっている。
しかし年間GDP成長率は8.1%と力強い回復をしており段原紙輸入量が前年度比17%以上も減少している事実を「景気鈍化」だけで説明するには不十分だと感じる。
過去2年間各業界メディアで発表された段原紙増産情報を集計すると、2020年は1,097万㌧、21年は584万㌧の新マシンが中国で稼働している。 20年の段原紙消費量が前年比836万㌧増加し、輸入量が350万㌧近く増加している事から新たに稼働した段原紙マシンは非常に低い稼働率で運転していると推測できる。
21年はさらに原料不足や電力不足から停機、減産を余儀なくされているメーカーも多い事から、増産の影響を感じにくかったのではないだろうか。それでも21年の段原紙輸入量が減少に転じている事は、2年間で1,700万㌧近く増産している事を鑑みると当然の事だと言えるだろう。 さらに驚くのは現時点で発表されている今後の中国国内の増産計画が詳細未定のものまで含めると2,786万㌧にも上る事だ。 原料調達問題もさることながら、増産量から今後中期的に段原紙輸入量は縮小していくのではないかと予測できる。さらに玖龍社を始め大手製紙企業は川下への投資を進め、一貫化を加速させている。中国が今後も安定的に段原紙を輸入し続けるとは考えにくい。
ただし、中国が古紙を輸入禁止にした後も段原紙の生産量を増加させている理由は、その経済成長と包装需要拡大のポテンシャルが高い為である。 2019年の北米段ボール消費量は3,145万㌧、日本は923万㌧、中国は4,748万㌧で総消費量では先進国やその他の地域を大きく上回った。
しかし、一人当たり消費量は北米で96kg/年、日本は73kgであったのに対し、中国は34kgだった。個人消費量に於いて北米は中国の3倍、日本は約2倍の量を消費している。 さらに北米では包装紙の40%年間38kgが食品用用途となっている。中国に食生活が似ている日本に於いても34kgと北米の消費量に近いが消費されているが、中国はわずか5kgに過ぎない。食品包装の分野では北米・日本は中国の7倍を消費しており、中国はまだまだこの分野の市場成長が見込める事も表している。 長期的には市場がまだまだ拡大する余地がある事は数字からも明らかだ。