■ 2020年EU紙パルプ統計 新型肺炎で生産・消費量縮小 輸出比率は増加
2021年7月9日
2020年のEU紙パルプ統計が発表された。
統計によると、20年は新型肺炎の流行と経済活動の減速によりEUの紙及び板紙の消費量は前年度比5.3%減少し7100万㌧となった。生産量は8250万㌧で4.8%減少している。
しかし、多くの製造業が都市封鎖や政府の要望により操短する中で紙パルプ産業は操業を止めることなく稼働できた。
新型肺炎の流行はグラフィックペーパーに大きな影響をもたらし、産業構造の衰退と大きな構造変化の必要性を露呈した。新聞を含む出版社、オフィス用途、商業印刷などの需要は劇的に減少し19%以上の落ち込みとなった。
一方、包装用紙、衛生紙の生産量は2~3%増加し、特殊紙の需要は前年度と同水準を維持した。包装用途の紙器やダンボールは医療品や食品の輸送に必要不可欠な材料であり、通信販売などの需要も増加した。家庭紙も観光・ホテル産業の需要が減少したものの、衛生意識の高まりにより、家庭消費用を中心に需要が増加し恩恵を受けた。
パルプの消費量は景気減速と紙・板紙の生産量の減少により6.4%減少した。生産量は4.7%減少したものの、パルプ輸出量は2.8%増加し外販パルプの生産量は横ばいとなった。
紙・板紙の輸出量は3.1%減少したが、生産及び輸入量が4.5%縮小した事に対し減少幅は小さくとどまった。さらに生産量に占める輸出量の割合は26%と過去最高量に達し、構造の変化を大きく表す数字となった。
EU紙パルプ協会は市民に対しエッセンシャルな製品を安定的に提供すると同時に、競争力の強化と持続可能な生産計画を発表。
2020年は古紙の回収量が減少したことでリサイクル資源の入手が困難となり、古紙の品質も低下した。しかしEUの紙リサイクル率は1.4%増加し、73.9%に達した。リサイクル率向上の提言がなされた1998年と比べると1600万㌧以上、古紙リサイクル率は40%以上増加した。また製紙業界からのCO2排出量も脱炭素化に向けた業界の継続的な取り組みにより前年度比7.1%減少した。生産量の縮小を考慮しても、製品1トン当たりのCO2排出量は3.1%減少している。エネルギー部門では持続可能に生産管理された木質バイオマスなどの導入により再生可能エネルギー使用率は62.2%となった。
欧州委員会によると、EU経済は2021年に4.2%成長し、2022年には約4.4%にまで拡大すると推定されている。2021年4月末現在、欧州諸国における紙・板紙生産量は前年同期比1.0%増加し、経済リバウンドの恩恵を受けることが期待されている。